チェスリン・コルビを紹介しているはずだった。
国内リーグワンのSNSが相次ぎ紹介する動画のひとつに、1月24日に埼玉・熊谷ラグビー場であった1部・第6節のワンシーンがある。
東京サントリーサンゴリアスが擁する南アフリカ代表49キャップ(代表戦出場数)のランナーが自陣深くから走りだし、防御網を破り、ハーフ線付近左から端側へボールを蹴り込んでいた。
身長172センチ、体重80キロの15番の技巧と加速力が紹介されるなか、ある同僚が独自の見立てを示した。
日本代表36キャップを持ち、この日サンゴリアスの9番をつけていた副将の流大が、自らのXのアカウントで当該のリンクをシェア。補足文はこうだ。
<チェスがすごいのはもちろんジャックがすごすぎる。ラックから2人目のDFにいたのに最後ボールのところにいる。ジャックはチャンスの時もピンチの時もいつも画面に映る>(原文ママ)
ジャパンで共闘したことのある、埼玉パナソニックワイルドナイツのジャック・コーネルセンを讃えていた。ちなみに勝負は、ワイルドナイツが31-30と辛くも制していた。
確かに映像では、前衛の防御ラインに入っていた青の5番がコルビの加速とともに後方へダッシュ。キックされる位置を先回りするようなコースを走り、弾道に追いつくまであと一歩だった。
決して得点に絡まなかったこの動きには、平時から勤勉なこの人らしささがにじんでいた。
当時の心境はどうだったか。ここからもう少しレギュラーシーズンが進行したところで、本人が明かした。
慎ましい言い回しで、「予測」が肝だったと述べた。
「特に覚えてはいませんでしたが、映像を見せられたら思い出すことができます。コルビのような速い選手であれば、どこからでもトライを狙えるだろうと予測。できるだけ早く(自陣ゴール前へ)戻れるようにと走りました」
昨秋にはジャパンの一員として出たジョージア代表戦で、抜け出す走者の足元へ後ろから手をかけてトライを防いでいた。身長195センチ、体重110キロの31歳は、危機察知能力と踏ん張りを長所とする。
「ラグビーの一部として、読みというものがある。常に予測しています(ジョージア代表戦での)タップタックル。ほとんどの場合はうまくいかないものですが、うまくいった時は嬉しいですね」
昨年12月からのリーグワンでも、今季は第14節までに11試合でプレー。走者をせき止める高低のタックル、相手ボールラインアウトにおけるターンオーバーでも光る。
日本代表ではここまで29キャップを獲得し、今年の活動に向けた候補メンバーにも名を連ねる。2月上旬に発表された。
「あのような早い段階でスコッドがアナウンスされることにどんな意味があるのかはわかりませんが、私たちのやることは変わりません。ワイルドナイツのためによい仕事をして、再び日本代表に選ばれたら嬉しいことです」
2027年には母国のオーストラリアで、出場すれば自身2度目となるワールドカップがある。地元ブリスベンで強豪のフランス代表戦が組まれている。
壮大な目標が視野に入りそうななか、コーネルセンは足元を見つめる。
「ワールドカップのことは、さほど詳しくは見ていません。大会が始まる前に(今季を含め)2つのリーグワンがあり、複数の代表戦があります。(本番は)遠い先です。まだ先のことですし、そこまでの間に色んなことが起こりうる。これについて思い切った発言をしようとは考えていません」
一歩、一歩。「80分間、いい働きをし続ける。スイッチを切らない」のがチームおよび自身の目標だ。
話をしたのは拠点でのトレーニングの直後だった。愛用する濃紺の大きなハットをかぶっていた。時にはこれを着用したまま本格的なスクラムの練習に参加していて、その点を聞かれれば「時々、つけたままで、時々、外します。時々、邪魔になりますし、時々、邪魔になりません」とアンニュイに応じる。
