三代目 J SOUL BROTHERSがやってくる。
4月11日午後。2010年代に人気を博したアーティストが夜までにライブを開くとあり、東京の味の素スタジアムの周りは華美でカジュアルなコーディネートの若者がぽつぽつと集まっていた。
グラウンド脇の朝日通りを抜け、会場を背に右折すると、見えてくるのはAGFフィールド。こちらには、ラグビー界きっての大物のひとりが訪れていた。
マニー・リボック。ラグビーワールドカップ2連覇中で世界ランク1位の南アフリカ代表として、28キャップ(代表戦出場数)を誇るプレーメーカーだ。
この日は入りたての花園近鉄ライナーズの10番をつけ、国内リーグワン第2部・第11節に先発した。
公式で「1,280名」の観客の多くはバックスタンドの芝生席に散っていて、その一部は遠方から来たであろうライナーズファンだった。近鉄コールがこだました。
最高気温28度、強い日差しの注ぐ戦いの場にあって、身長184センチ、体重79キロの28歳が観客の期待に応えていた。
前半4分、中盤で想定より後ろへそれたパスを駆け戻って拾い、見上げた先に並ぶ防御を一気に抜き去った。先制した。
続く20分には、自陣22メートル線付近左のラインアウトで味方が捕球しそこねたボールをキャッチ。一気に駆け抜け、2度目のフィニッシュを記録した。
33分には敵陣中盤で細かいフットワークとオフロードパスでゲインラインを攻略。CTBのピーター・ウマガ=ジェンセンのトライをお膳立てした。
後半13分には敵陣ゴール前で深めのパスをもらうや細かい足の刻みで4人のタックラーをかわした。ハットトリックを達成した。
総じて相手の防御ラインに近づきながらのパスで味方への重圧を和らげ、自陣から敵陣のスペースを射抜く鋭いキックでも魅した。
「パフォーマンスに満足しています。やりたいことはやり切れました。勢いを切らさず、相手にプレッシャーをかけ続けられた。我々のプランにこだわった皆を誇りに思います」
本人がこう切り出したのは、正門付近の取材エリア。最下位の日野レッドドルフィンズを77-36で下して首位をキープしたゲームについて、慎ましく振り返った。
「チームの助けになれて、かつチームの求めるラグビーをやり切れてハッピーです。ただ、それは周りの選手が自分を犠牲にするような動きをしてくれたからです。ボールのないところでもワークレートを上げ、ポジショニングをして、オプション(攻めの選択肢)となってくれました。皆のおかげで、自分はプレーしやすかったです」
就任1年目の太田春樹監督は「グラウンド内外でリーダーシップを取ってくれる」と評価。一緒のフィールドに立って目下トライランキング1位の木村朋也はこう頷く。
「両足でキックを蹴られるところやスピードが頼りになります。コミュニケーションを取ってくれるところも助かります。ミーティングでは積極的に発言し、アーリーエントリーで来ている子ら(シーズン途中に加入の新人)にも自分から話しかける。兄貴肌のところがあり、すごくいいやつです!」
チームマンとしても貴ばれるリボック。開幕2か月前の昨年10月には、代表活動の合間の休息期間中だったにもかかわらずライナーズへ一時的に合流した。チーム戦術や部内で使うコールを理解すべく、練習場に立った。
晩秋には再び国際舞台に出た。過密日程下、つかの間の休息を削ってライナーズと繋がろうとした。
「選手やコーチのこと、ライナーズのラグビースタイルを学ぶうえで、貴重な2週間でした。それがあったおかげで、ご覧のとおり開幕からフィットできています。もともと、それを自分のやらなくてはならないことと捉えていました。それによって疲れたという記憶はありません」
この日も7月の代表戦へ意気込みを聞かれれば、「自分のフォーカスはライナーズにある」。まずは目下首位のレギュラーシーズン、5月下旬にある1部との入替戦に視線を注ぐ。
「大きな試合でベストを尽くし、目標達成の手助けをすることしか考えていません。まずは入替戦に辿り着けるように、矢印は自分たち自身に向けて、毎週、戦う。そうなった(入替戦出場が叶う)時のことは、そうなった時に考えます。」
複数記者の問答に応じ、16時までにバスでスタジアムを離れた。会場は撤収作業に入る。目と鼻の先にある味の素スタジアムのあたりでは、コンサートのスタッフが拡声器で行列をさばいていた。
