スターターの仕事を全うする。
3月29日、東京・秩父宮ラグビー場。リコーブラックラムズ東京の笹川大吾が、国内リーグワン1部・第13節で今季11試合目の出場を果たした。先発は10度目だ。
先頭の右PRを務める。同じ位置のリザーブには、オーストラリア代表3キャップのパディー・ライアンが控える。コーチ兼任で身長190センチ、体重120キロの37歳がピッチに出るまでは、身長187センチ、体重115キロの28歳が最前線で奮闘する。
「パディーにいい『パス』を渡すことがいまの役割。前半、スクラムを安定させる。(出場時間は)長くなくても、大事な仕事だと思っています。しっかり40分、遂行します」
この日は三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦。まず見せ場のスクラムでよい姿勢を保ち、時折、圧をかけた。
ライアンやFWコーチのカール・ホフトらと作り上げたパックには、実戦を重ねるごとに手応えを感じている。フィールド内外でのディスカッション、ライブセッションを通し、心がけたのは「クリアなスクラム」。まっすぐ、きれいな形をレフリーに示し、ペナライズされるリスクを減らして相手にプレッシャーをかける。
球が動けば、先制点のきっかけを作る。14分頃には中盤でスティールを成功させた。もともとジャッカルと呼ばれていたターンオーバーのスキルで、ペナルティーキックを獲得したのだ。敵陣ゴール前へ進み、16分にはチーム初トライに喜んだ。
「普段はジャッカルなんて狙わないんですけど、前の(味方)選手がタックルに行った後、たまたま(走者が自身の目の前に)倒れてきた。『あ、これ、いけんのかな』…という感じで、いきました」
一時は味方がイエローカードをもらい数的不利に陥るも、持ち前の粘りで21―0とリードしてハーフタイムに突入。ライアン登場後もペースを握ったブラックラムズは、33―7で今シーズン8勝目をマークした。
レギュラーシーズンを5試合残して12チーム中5位と、6傑によるプレーオフ行きへ徐々に近づいてきた。
特筆すべきは113という反則数。リーグ最少だ。
まずは笹川たちがスクラムを安定させたことで、故意に塊を崩したとして笛を吹かれるケースを減らしている。それぞれの心がけ次第でなくせる軽微なペナルティーについては、普段の練習から誰かが犯した分だけ全員にバービージャンプが課されるとあり自ずと本番で出づらくなってきた。
フィールド外でも順法精神が問われる。ロッカーの使い方が極端に乱雑だったり、専用ツールに毎日記録する体重を書き漏らしたりした選手は、罰金を払うことになっているのだ。
笹川は、部内でそのあたりを取りまとめるグループの一員である。社員から専業のプロ選手に転じた経緯があるためか、取り締まり方は優しい。
「1回ミスすると××円。社員選手は掃除だけでもいいよ、と」
集まった資金は、共用スペースにあるコーヒーマシンのカプセルの購入などに用いる。世田谷区内のクラブハウスに、緊張感と和やかさを同居させる。
明大出身だ。同じ大学から入った同期に、前主将でHOの武井日向がいる。長らく雌伏の時を過ごす盟友が帰ってくるのを、じっくりと待つ。
「本人が復帰に向けて頑張っている。こちらは無理をさせないように…という感じです」
入部してからは不振も味わったが、いまは大台達成に近づいている。冗談の口調で「先々週くらいまでは『(上位にいることに)慣れないなぁ』みたいな感じはありましたが…」と切り出し、「いまは、そこに行くチームになったと自覚。1試合も落とせない気持ちで、やるだけです」。一戦必勝を誓う。
