さすがワールドクラスの職人だ。ニュージーランド代表として88キャップ(代表戦出場数)のアントン・レイナートブラウンが、コベルコ神戸スティーラーズの13番をつけて鮮やかな仕事を連発した。
3月20日、拠点の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で国内リーグワン第12節に先発した。
9点差を追う後半12分、敵陣22メートルエリア中央で深めの位置から駆け上がる。防御ラインと入れ違いになるような角度でボールをもらい、突破。追撃のトライを決めた。直後のゴール成功で22-24と差を詰めた。
続く15分頃には、自陣ゴール前左中間でスティール。ピンチを脱した。
さらに27分には、敵陣22メートル線付近右中間で好パスを繰り出す。
いったん投げるそぶりを見せ、右大外の防御役の飛び出しを誘う。
その背後へ簡潔に球をさばき、味方PRの前田翔を走らせた。フィニッシュ。ここでもコンバージョンが決まったため、スティーラーズは29-24と5点リードを奪った。
終盤におおよそ14得点に絡み、最大で7失点を防いだと言えるレイナートブラウンは、勝ち越し点を決めた前田を讃えた。
「翔には練習でもゴール前で抜かれたことがある!(俊足選手の多い)WTB並みに足の速い彼が近くにいるのは知っていたし、私の立ち位置的に相手が防御の間合いを詰めてくるのもわかっていた。(しばらく球を持って)ためれば、スペースが見えてくる。そこにいたのが、翔だった」
もっともゲームは29-38で落とした。スティーラーズは勢いづいたタイミングでミスを犯し、終盤に再逆転を許した。
総じてエラーが多かったのも災いし、星取表にあっては戦前の首位から3位に陥落。さらに、対する横浜キヤノンイーグルスの最下位脱出を見届けた。
ノーサイドの直後に述べた。
「若手も多い私たちのチームにとっては、いいレッスンがありました。もちろん勝ち続けられれば上等ですが、こういう時(敗戦)からも得るものを得なければならない。向上の余地があると知れました」
白星を掴んだ多くのゲームで見られた粘り、スキルの正確さ、緊急性がこの午後に限って損なわれていたのだとしたら、何が原因か。即答した。
「メンタリティです。フィジカルに戦うこと、最後までワークアウトすること(への意識)。今季ここまではそれが伴っていましたが、少しでも欠けてしまうときょうのようなこと(敗戦)が起きる。それが表面化しました」
向こうがニュージーランド出身のレオン・マクドナルドヘッドコーチ、南アフリカ代表60キャップのファフ・デクラークがいるのを踏まえ、こうも続けた。
「リーグ全体の質が高いとわかりますよね。最下位だったチームにもレオンさん、ファフさんのような素晴らしい人がいる。逆にそんなチームが、(低迷していたため)何も失うものがないからと強いメンタリティを持っていたのがきょうです」
各クラブに実力者がひしめき、常に高次の緊張感が求められるのがリーグワンのよさだとレイナートブラウンは言う。
身長185センチ、体重96キロの30歳は今季限りの日本参戦。残り6試合となったレギュラーシーズン、6傑で頂点を争うプレーオフを通し、パフォーマンスの一貫性を保ちたい。
