ラグビーリパブリック

賑やかな家の住人。ブラックラムズの大西将史が戦う理由。

2026.03.26

3月21日の埼玉WK戦、キックチャージからトライに持ち込んだ大西将史[BR東京/HO](©︎JRLO)

 交代を告げられた。

 ただ、いつグラウンドに戻ってもよいよう「気持ちは切らさずに」。大西将史にとって、それは当然のことだ。

 リコーブラックラムズ東京のラグビー選手で、ポジションは先頭中央のHO。フロントローというスクラム最前列の一角で、専門職の働き場だ。その位置のリザーブプレーヤーに怪我があれば、退いていたスターターが元の位置に収まる。

 身長180センチ、体重110キロの31歳は微笑む。

「気持ちは切らさずにベンチにいました」

 3月21日、埼玉・熊谷ラグビー場でのことだった。国内リーグワン1部の第12節へ先発。対する埼玉パナソニックワイルドナイツから自らトライを奪った後半15分にいったんフィールドを離れるも、22分に再登板した。トータルで73分ほどフィールドに立つ。

 試合は戦前2位の相手に5-31で敗れ、向こうの首位浮上を許した。自身も再出場した約3分後には敵陣ゴール前左でのラインアウトを相手に阻まれ、「クリアなスペース(捕球しやすい位置)にボールを入れようというコミュニケーションを(仲間同士で)取れていたんですけど、ディフェンスが上手だった」と反省することとなる。

 しかし、総じてスクラムがよかった。特に、最初のメンバーチェンジまでの時間帯は向こうの反則を誘うシーンも作った。

 アシスタントコーチのカール・ホフト、この午後ハーフタイム明けから投入されたプレイングコーチのパディー・ライアンのもと、昨年7月のプレシーズンの時期から組み込んできたのがよかった。

「自分たちがクオリティボールを出せれば、BKがいい形に持っていってくれるとわかっている」と大西。SHのTJ・ペレナラら司令塔団の技術に全幅の信頼を置くことで、スクラムを組むうえでのタスクに集中できる。

 互いに繋がったうえで相手と十分な間合いを取り、鋭い「ヒット(組む瞬間の仕掛け)」で「センターライン(相手との境界線)」を超えにかかる。「センターライン」の制圧を重んじるのは、いまの指導体制ができる前から変わらないと2017年入団の大西は言う。

「ヒットで勝てれば、いいスクラムに繋がるとわかっている」

 スクラムはもちろん、接点での激しさもチーム内外でアピールする。その結果、今季はスタメン出場の機会を増やしている。キックオフの瞬間からピッチに立つほど、安定的によい働きができると実感する。
 
 私生活も充実する。妻が理想とする家庭を作ろうとした結果、家には子どもが大勢いる。

「先月、5人目が生まれました。(それぞれ)7歳、6歳、4歳、1歳、0歳です。楽しいです。賑やか。家のなかがシーンとしているより、誰かしらが騒いでいたほうがいいのかなと」

 大家族の父でもあるこの人は、約3年前に社員選手から専業のプロ選手に転じている。子どもたちと寝室を分けてもらって睡眠の質を保つなどし、仕事のパフォーマンスを高める。

 頑張る理由は他にもある。専業選手として臨む最初のシーズンに先立ち、1型糖尿病になったとわかった。ちょうど脳震盪にさいなまれ、復帰できる頃合いになっても体重減や体調不良が治らなかったことで気づいた。

 いまなおトレーナーに協力してもらって血糖値を測ったり、自らインスリンを投与したりしてフィールドに立つ。

「この病気を理由にラグビーを辞めるのは嫌なので、できる限りやろうかなと」

 ブラックラムズは現在12チーム中5位。レギュラーシーズン6試合を残し、6傑によるプレーオフ行きに近づいている。達成すれば、旧トップリーグ時代から通算してクラブ史上初の快挙だ。物語を紡ぐ背番号2は、「選手が自信を持ってプレーしているのが好調の理由。(目標達成へ)僕の力でプラスになることがあれば、何でもやろうと思っています」と誓う。

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