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【ラグリパWest】山椒は小粒でもぴりりと辛い。北風凰介 [常翔学園高校/ラグビー部/BKリーダー]

2026.02.26

166センチと小柄ながら、動きのよさと当たり強さで大阪・常翔学園のBKラインを引っ張るCTB北風凰介。そのプレーぶりは日本ラグビーの進むべき道を示しているかのようである。北風の奮闘もあり、チームは来月下旬に開幕する第27回全国選抜大会に出場する。北風の後方に映るのはチームが日々練習する淀川の河川敷グラウンドだ

 大阪の高校ラグビーの決勝を見に行った。近畿大会の予選であり、新人戦である。

 北風凰介(きたかぜ・おうすけ)に目を引かれた。常翔学園の新3年生。CTBであり、BKリーダーをつとめている。

 北風には日本ラグビーの将来が詰まっている。166センチという小柄な分、俊敏性に優れる。左右に飛ぶ。昔、その俊敏さを「牛若丸」と例えたが、そんなステップだ。タックルも背丈を利して低く入れる。

 アタックで前が詰まれば、しっかり、強く体をぶつける。体重は76キロ。逃げない。
「困ったら、当たります」
 笑うと細い眼がつながる感じだ。顔の肉付きは10代っぽい。おうとつに富む。

 そのステップにはお手本がいる。
「石田吉平さんです」
 紺に赤2本のジャージーの今を代表するWTBの先輩だ。25歳。常翔学園から明治を経て、リーグワンの横浜Eに入った。日本代表キャップは9。背丈は北風とほぼ同じだ。

 常翔学園の監督、白木繁之は比較する。
「似ているところはありますね。ただ、石田吉平は来た時から石田吉平でした」
 1年からFLでレギュラーになる。日本代表入りする片りんはその頃からあった。

 白木は続ける。
「北風は遅咲きですね。去年の夏合宿はCチームでした。」
 中部大春日丘との3軍戦で前半4トライを失った。そこから北風のトライを含め、盛り返した。その印象が白木には強い。

 抜擢されることをやってきた。淀川の河川敷にあるグラウンドでは土手でダッシュを繰り返す。入浴すらトレーニングの対象だ。
「浴槽の中でかかとを上げ下げします」
 お湯の抵抗を生かして、足首やふくらはぎを鍛える。100回単位で取り組んだ。

 自分に課したトレーニングも遠距離通学も覚悟の上である。自宅は京都市内にある。
「FWの強いところでやりたかったのです。OBもリーグワンで活躍しています」
 京都から常翔学園への進学は珍しい。地元の大阪が中心である。

 起床は4時30分。5時には自宅を出る。自転車、電車、バスを乗り継ぎ、学校に到着する。朝練習は7時から始まる。
「母は毎朝、僕より早く起きて、弁当を作ってくれます。自慢の母です」
 母・恵美の存在も動機付けのひとつになる。

 北風の出身中学は音羽(おとわ)。競技を始めたのは入学後だ。
「母のすすめもありました」
 7年前のW杯の盛り上がりもあった。小学校時代はサッカーをやった。蹴り足は左。これもラグビーでは希少な存在である。

 北風の人となりを山北靖彦は評する。コーチとしてBKを主に見ている。
「実直やね。人の目を見て話ができる」
 山北はSOとして1988年度からの神戸製鋼における全国社会人大会と日本選手権の7連覇の初期を支えた。今、チームは神戸Sになり、2大会はリーグワンに集約された。

 話者の目に向ける視線はまた、北風が得意と話すショートプレーに生きる。
「どこが空いているか見極めて、外から角度をつけてボールをもらいにいきます」
 このプレーは、オフロードで受け手に光を当てたプレーと考えて差し支えない。

 北風が最終学年を迎える常翔学園は高校ラグビーを代表するチームだ。冬の全国大会における勝利数は104。秋田工の138、天理の111に続く3位。3ケタはこの3校だけだ。

 常翔学園の大会優勝は歴代5位の5回ある。出場は43回。この年末年始にあった105回大会は2回戦敗退。優勝する桐蔭学園に5-37だった。北風はCTBで先発した。

 常翔学園の創部は1937年(昭和12)。それから26年後、天理大OBの荒川博司が前校名の大阪工大高の保健・体育教員として赴任する。同時にラグビー部監督につき、強豪化する。全国大会初出場は1966年の45回大会。4強戦で天理に0-19で敗れた。

 秋田工と天理はともに大正年間に創部し、戦前の旧制中学時代に全国優勝をしている。そのことを考えれば、昭和40年ごろから本格的な歴史が始まったチームとしては、荒川を始祖とする健闘が光る。

 荒川が部長に退いたあと、監督になったのは教え子で現GMの野上友一である。野上はこの4月から常翔学園の中学と高校の校長につくことが発表された。ラグビーが学園の中心に据えられていることがわかる。

 校舎の東側には新しい人工芝グラウンドが造設中だ。ほぼフルサイズ。野上は話す。
「使用は来年の7月ごろになるかなあ」
 河川敷の土から人工芝にグラウンドが変わる。ハード面の充実は強化に直結する。

 北風が在校中にこの新人工芝グラウンドで練習することはない。しかし、その部史の中のひとりになることは確実だ。
「毎日、めちゃめちゃ楽しいです。常翔に来てよかったです」
 その充実ぶりを言葉にする。

 充実には、時間が空けば通う学校近くにある銭湯も含まれる。千林大宮商店街にある神徳温泉がお気に入りだ。
「最高です。整います」
 サウナセットは740円。2時間くらい入浴を楽しみ、気分転換を図る。

 その北風の奮闘もあって、常翔学園は選抜大会に出場する。予選となる近畿大会は代表決定戦で関西学院を14-12で振り切り、4年連続16回目の出場を勝ち取った。

 選抜大会は27回目。来月24日に埼玉・熊谷で開幕する。北風はチーム目標を挙げる。
「桐蔭学園に勝つことです」
 年末年始の雪辱を果たしたい。常翔学園の優勝は3回大会。大阪工大高の時代だった。

 個人的な目標もある。
「いい大学に行きたいです」
 存在感を出せれば、自身の進路も照らされる。春に「からっ風」を吹かせたい。赤城山から吹き下ろすのは北風の一種でもある。

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