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昨季ファイナリスト対決はブレイブルーパスが僅差勝利! 両軍の思いは。

2026.01.25

後半22分から出場した杉山優平[BL東京/SH](撮影:矢野寿明)

 プレッシャーをかけ合ったからだろうか。

 互いに攻め込んで、攻め込んで、攻め込んでもスコアしきれない時間を過ごし、最後は2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京が逆転トライで4勝目を挙げた。クボタスピアーズ船橋・東京ベイの開幕からの連勝を5で止めた。

 敗れたSOのバーナード・フォーリーゲーム主将はこの調子だ。

「お互いの防御がいいなか、攻撃の遂行力の差が出た」
 
 昨季のファイナリストが東京・秩父宮ラグビー場に並んだのは1月24日。国内リーグワン1部のレギュラーシーズン第6節である。

 前半に躍動したのはブレイブルーパス。かねて陣営が「シーム(縫い目)」を狙うと宣言した通り、スピアーズ堅陣へ鋭く仕掛け、わずかな隙間へパスを試みる。

 その輪にいたNO8の山本浩輝が「スペースに対してアタックしようという思いは常にある」と説くなか、我慢を強いられた側で左PRの紙森陽太はこう認める。

「嫌なところにパスを放ってきて、ゲインを。スキルフルで、ディフェンス側としてはどの人にフォーカスすればいいかが難しかったです」

 肝心の得点板はそう動かなかった。

 敵陣で球を持ち続けていたブレイブルーパスは硬いモールを起点に2トライも、それ以上に敵陣22メートルエリアでの落球、連携エラーを重ねた。

 前半35分以降は先方のイエローカードで数的優位に立ちながら、前半ロスタイムに12-3とリードするまでの間に悔やまれる被ターンオーバーもあった。

 ハーフタイム明けに盛り上がりを作ったのはスピアーズ。風上に回ったことで、もともとのプランに備えられていたハイパント戦法を重用した。

 立ち上がりの2分間で高い弾道の再獲得を重ね、それをきっかけに大きなブレイクと追い上げの7得点をマーク。12-10と接近する。

 一時退場者が戻る前からNO8のタイラー・ポールらの厳しい防御が冴え、何より起点のスクラムで優勢になった。後半から右PRに入った為房慶次朗の鋭いヒット、押しもあり、ペナルティーキックを3本も獲得した。

 ゲームの流れの上でも追い風に乗るスピアーズは、後半26分、自陣22メートル線付近中央で攻守逆転。すると、ビッグゲインと鮮やかな繋ぎの合わせ技で一気に12-17と逆転した。

 ブレイブルーパスにとっては、逸機を繰り返した末に勝ち越される展開か。しかし本人たちは、それを悪循環と捉えていなかった。先発SHの高橋昴平は言う。

「焦りはなかったです。ベクトルが一緒でも少し連係不足だったり、ハンドリングがずれたりしていただけ。そこを修正すれば大丈夫かなと」

 前節までを4勝1敗とするなか、だんだんよい姿になっているのだろう。そう匂わせたのは杉山優平。最初のリードを与えるより4分前に、高橋に代わってSHに入っていた。

 杉山は、ビハインドを背負った瞬間の仲間たちの様子を克明に振り返る。

「数試合前だったら、ハドル(円陣)でも何人かが焦りながらいっぱい喋っちゃう感じでした。でもきょうは、皆が疲れすぎていたからかそうならず。リーダーが『次、こうなるから、こうしよう』という感じです」

 ここでの「こう」は、「次」のキックオフのラリーでもう一度マイボールを得られる、との算段を指す。

「そう。そこからアタックしよう、と。『アルファ』と呼ばれる僕らリザーブのメンバーも、キャプテンズラン(前日のセッション)の前に『もしこの時間帯、点差でならどうするか』という細かいミーティングをしていました。だから、ゲームのなかでは『やるだけだよね』と」
 
 終盤のブレイブルーパスは、研ぎ澄まされていた。

 ビデオ判定によりスピアーズの追加点が無効になった直後の後半30分頃、自陣中盤左のラインアウトから右へ展開する。

 大回りしてきたSOのリッチー・モウンガが、複数の防御役を引き寄せる。

 それまで放ってきたのと同様に、空洞へ鋭く放った。味方の好突破を確認しながら、左方向への折り返しをもらって右隅へキックを繰り出す。

 その行き先へ自ら駆け上がる。

 仲間と列をなす。

 向こうの処理を誤らせ、久々に手繰り寄せた得点機を活かすのだった。33分、17―17。

 その4分後には17-20と勝ち越されたが、杉山の言う「やるだけだよね」のイメージは不変だった。後半のスピアーズが前半のブレイブルーパスのように度重なるチャンスをふいにしてしまっていたのもあり、勝負の行方はホーンが鳴ってもわからなかった。

 ブレイブルーパスがカウンター攻撃から「シーム」を狙う攻めで、じりじりとゴール前に進む。

 スピアーズはキックオフから貫いた自陣ゴール前での粘りで対抗する。

 ある局面ではブレイブルーパスが大外を破り、またある時はスピアーズが接点周りで力強いタックルを繰り出した。

 ピリオドを打ったのはモウンガだ。

 2年連続MVPのプレーメーカーは、ゴールポストの近くのほぼ正面でバトンを受け継ぐや、右へさばくと見せかけて自慢のフットワークで前進。24-20。

 敗軍のNO8で主将のマキシ ファウルアは、逃げ切りまであと一歩及ばなかった激闘から伸びしろを見出す。

「自分たちのディフェンスの強みを、もうちょっと見直して、次に(ブレイブルーパスと)やる時は勝てるようにしたいです。もっとコネクションを取る。長いフェーズが重なっても、です」

 要所での反則がかさんで「P」の数は規律に課題のあった相手と同じ「10」にのぼった。フォーリーは続ける。

「時折レフリングが疑問に思うところもありましたが、いくつかは明らかに私たちのディシプリンの乱れです。こういう(実力者同士の)試合ではいかに相手にチャンスを作らせず、チャンスを作るかが大切です」

 繊細なしのぎ合いにおいて驚異的な集中力を示したブレイブルーパスでは、FBでゲーム主将の松永拓朗が瑞々しく発する。

「(クライマックスの約10分間は)去年、一昨年のように勝ち続けているチームの雰囲気を感じた瞬間でもありました」

 さらに杉山は、初戦で大敗したのを踏まえ「物語チック。逆に上がっていくだけ」。新年最初の休息週前最後の、それが現在地だった。

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