ラグビーリパブリック

対戦相手に褒められる。ブラックラムズの名手リアム・ギルは今季もハードヒット。

2025.12.19

フォローに走るリアム・ギル[BR東京/NO8](撮影:小山真司)

 活躍した証だ。

 試合後、勝った東京サントリーサンゴリアスの複数の選手が、周りに問われるでもなく名前を挙げたのはリアム・ギル。対するリコーブラックラムズ東京の誇るオーストラリア代表経験者だ。

 12月13日、東京・秩父宮ラグビー場での国内リーグワン1部の開幕節でNO8としてフル出場した。身長186センチ、体重105キロのフィジカリティを地上戦で活かした。

 29-15で白星発進のサンゴリアスでまず切り出したのは、FLで先発したサム・ケイン主将だ。ニュージーランド代表でも船頭役を務めた33歳である。試合中の接点の様子を聞かれ、こう話した。

「リアム・ギルが素晴らしかった。彼がボールへ絡んだら、動かすのが難しい」

 別な場所で話したのは竹内柊平である。

 日本代表としても活躍する28歳の右PRは、移籍したてのサンゴリアスの一員としてキックオフから60分間、プレーし、肉弾戦の話題に触れた。前所属先の浦安D-Rocksで同僚だったこともあるだけに、やや親しみを込めた口調で述べた。

 次戦以降への展望も絡めた。

「ブレイクダウン(接点)でリアムに阻害された。あそこでテンポを崩されると僕らの強みが出ない。次の試合へは、まずブレイクダウンにフォーカスしたいですね。ラック周辺にいる相手を(援護役が)早く排除したい。そのためにはボール保持者の寝方(にもこだわりたい)」

 その評価を伝え聞き、本人は「サンキュー」。ただ微笑むのみ。手柄は誇らない。もっとも他者の評価は事実に裏付けされていて、特に守りで激しく、しつこかった。

 試合開始早々、自陣10メートル線付近右中間でケインをビッグタックルでなぎ倒した。その約12分後には自陣22メートルエリア右でスティールに成功。後半1分頃にもハーフ線付近で球に腕を巻きつけ、15-7とリードしていた51分頃の防御局面でも、迫る突進役をせき止めた。

「サンゴリアスはよいスタイルを持っています。ワイドに振って攻める。フィジカルにプレーする。スキル面でもチャレンジしてくる。それでも、必ずブレイクダウンには(自身が手を突っ込む)スペースがあると思った。スローボールを作ろう、そこにハードヒットしようとフォーカスしていました。それが実際にできた場面もありました」
 
 わずかに及ばなかった。

 向こうがオーストラリア代表の実績があるショーン・マクマーンを途中から投じて機能させたのもあり、序盤先行のブラックラムズはだんだん流れを失った。イエローカードを2枚も出し、息切れした。

 12チーム中7位だった前年度よりも好位置につきたいブラックラムズにあって、殊勲の紳士はこう展望する。

「(チームの働きには)ハッピー。誇り高くハードファイトした。ただ、最後はエナジー、フィジカリティが切れてしまった。サンゴリアスが選手交替で作った勢いを抑えきれなかった。(一時退場者の続出で)13人だったのは、かなりトリッキーでしたね。課題は一貫性。高いレベルで戦えるから、それをやり続けないと。持久力は問題ないから、コネクションを見直す。また自分たちのシステムを信じて、ベターに成長し続けたいです」

 敗れながら称賛されるのは、勝利のために牙をむくからだ。20日には千葉・フクダ電子アリーナへ出向き、昨季準優勝で今季の初戦も取っているクボタスピアーズ船橋・東京ベイへぶつかる。

Exit mobile version