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脱力と出力。日本代表でも手応え掴んだ木田晴斗、スピアーズでトライを量産へ。

2025.12.19

練習後の木田晴斗[S東京ベイ/WTB](筆者撮影)

 よい状態を保つために考える。

「すべてを100パー(セント)でやるんじゃなく、出すところは出して、抜くところは抜く。それを意識します」

 木田晴斗。クボタスピアーズ船橋・東京ベイでWTBを務める。身長176センチ、体重90キロで均衡の取れた肉体を有し、ジャンプ、走り、左足のキックが光る。

 重視するのは、ゲームのさなかの力の入れどころだ。フルパワーを「出すところは出し」て、適宜、あえて脱力する。

 周りに相手がいなければ、力強く走る。そうでないなら、まずはボールを失わぬために神経を注ぐ。

「外でボールを持った時やスペースがある時は持ち味を発揮できるのでそういう時は、指す。逆に、スペースがない時はしっかり抜く」 

 12月13日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸。コベルコ神戸スティーラーズとのリーグワン開幕節に11番で出た。

 33-28で勝利。自らも2度トライラインを割り、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。

 総じて「そんなに満足できるプレーができたわけではない。ただ、落ち着いてできたと思います」と冷静に振り返るが、後半30分の自身2本目のフィニッシュには手応えを掴んだ。

 ハーフ線付近左からのカウンターアタックで、今季より本格的に加わったFBのショーン・スティーブンソンと鮮やかにパスを交換。最後は腿を振り上げながら、約20メートルを疾走した。

「スムーズにできた。ショーンもスキルフルな選手なので、これから色んなところで僕らが活かされると思う。そんな時にしっかりとトライを獲り切れるようにしたい」

 飛躍の季節を過ごした。昨季は故障のため7試合のみの出場も、復調と同時に2023年以来となる日本代表入りを果たす。8月のパシフィック・ネーションズカップでテストマッチ(代表戦)デビューを飾った。

「コンディションがよければできるという感覚は掴めた」

 戦前の世界ランクで3つ上回っていたフィジー代表との決勝では、貴重なレッスンも受けた。相手の蹴り上げたハイパントを跳躍して捕ろうとしたところへ、身体能力の高い相手の捕球役の手が伸びてきた。国際的選手のばねや四肢の長さを体感した。

「しっかり(相手の懐に)身体を入れることの重要性を知りました」

 今回の開幕節で「落ち着いてできた」と発したが、それもジャパンを経験できたからだという。

「違うチームでプレーできたこと、高いレベルで緊張感を持ってやったことで、余裕ができたというのがあります」

 10月以降はワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表などとぶつかる予定だった。しかし、事前合宿で途中離脱を決めた。膝の状態が芳しくなかったからだ。

 エディー・ジョーンズヘッドコーチには、治療を終えたらすぐに戻ってきてほしいと頼まれた。嬉しく思ったが、「ここで焦ったら悪い流れになる。治すことに専念しました」。自分には、自分と向き合う責任があるのだと知る。

 距離を置いて見た秋のキャンペーンは、1勝4敗に終わった。
 
 ダブリンで現地時間11月8日にあったアイルランド代表戦では、向こうが約1週間前のゲームと比べ大幅にメンバーを入れ替えていたのに10-41と敗れていた。

 少年時代に極真空手の世界チャンピオンだった26歳は、現実を踏まえつつ前向きに述べる。

「まだまだジャパンと(強豪国との)差は大きいなと。フルのメンバーで来ていない相手にも点差が開いていたので。でも、そこを埋めていく時間はある。通用していた部分もある。まずは自分自身が来年、そこに立てるように頑張っていきたいです」

 話をしたのはスティーラーズ戦の5日後。千葉県内の拠点でのことだ。

 直前までは練習に参加した。トレーニングの前後には股関節を入念にストレッチ。セッションの合間には足の様々な部位を伸ばしたり、動かしたりする。柔軟性を育み、違和感をなくす。

 20日には千葉・フクダ電子アリーナで、リコーブラックラムズ東京との第2節に挑む。時には悠然と構え、時には激しくファイトする意思で、「優勝に繋がるトライを獲る」と宣言する。

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