組織力をアピールした。
埼玉パナソニックワイルドナイツは12月14日、国内リーグワン1部の初戦で2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京を46-0で完封した。
「グッドスタート」
語るのはラクラン・ボーシェー。殊勲者のひとりだ。会場の東京・味の素スタジアムの取材エリアで淡々と述べる。
今回は、11月まで国際舞台に立っていた各国代表選手の多くをメンバーに入れていない。新ヘッドコーチの金澤篤は、かねて「個人の体調と、チーム内でのコンビネーション、コンヒージョン(団結力)を重視して選手選考を」。結局、夏から秋に部内で鍛えた面々を信じた。
今度の隊列で勝ち切る自信があった。ボーシェーはそう言いたげだ。
「プレシーズンを一緒に戦った選手たちにコーチ陣が信頼を置き、戦ってきたことがよかった。代表選手に休むチャンスを与えたとともに、自分たちのプレシーズンが実った」
身長191センチ、体重104キロと大柄にして、地上戦に強い。2016年からの約6年間は、母国ニュージーランドの名門チーフスに在籍。一時はオールブラックスこと自国代表入りへの待望論が囁かれたオープンサイドFLである。
この午後も、厳しい局面で持ち前のスキルを示した。
まず3点を先行していた前半9分。自陣中盤で乱れたボールを相手に拾われピンチに直面する。ここで抜け出した走者へ、前方から駆け戻ってきたボーシェーがロックオン。味方が足を掴んで倒したそのランナーの手元へ、自らの腕を差し込む。ボールに絡む。
倒れたまま球を手離さない、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘った。失点を未然に防いだ。
「直感でリアクションしました。頑張って戻った甲斐がありました」
その約5分後には、ファーストトライに繋がるモールを前に押し進めた。背中は芝と平行。まっすぐ力を伝えた。
点差を離しながら集中力を保った。
39点リードの後半14分には、自陣10メートル線付近右の防御ライン上でスティールに成功。続く19分には、自陣ゴール前でのカウンターラックを攻守逆転に繋げた。
「長くキャリアを積んでいる分、『どこでいく(ボールを奪う)か』の感覚はあります。いいタックルがあれば行くチャンスがある。周りの人がどのような仕事をしているかを見るのが大切です」
自らのトライなどで46得点目を刻んでいた同37分には、自陣10メートル線あたり中央でキックオフからのルーズボールを拾う。走りながら右奥へ蹴る。そのままスピードを緩めず捕球役へ圧をかけ、味方が守備網を敷く時間を作った。
ノーサイドまでの間、タックル成功数は両軍通算3位タイの12本を記録。職人は静かに述べた。
「ゼロで抑えられたのは喜ばしい」
今季はレギュレーション上、「カテゴリA」に区分される。シーズン終了後に日本での代表資格を取れる見込みのため、外国人枠と無関係に出場機会を得られる。
「自分自身にとってあまり変化はないと思っています。フィールドに出た時、役割を遂行していかなきゃいけない」
働き次第で広がるジャパン入りの可能性についても、「日本代表には優れたFLがいます。そんななかでも呼ばれる機会があればよいですが、今季はまずパナソニックのことに集中したい。わくわくしたい」。昨季4位と2季ぶりに決勝進出を逃したクラブで、仲間と喜び合いたい。
