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トップイースト最終節、ディフェンス戦を制した明治安田の秘策とは。

2025.12.17

トライラインに迫る日立PR俵啓斗(国士舘大)を止める明治安田LO相部開哉(慶應大)とLO平田大貴(東海大/筆者撮影)

 既報の通り、2025年トップイーストリーグはAZ-COM丸和MOMOTARO’Sが全勝優勝を果たしその幕を閉じた。その試合に先立って行われたのが同じくトップイーストAグループの明治安田ホーリーズ対日立サンネクサス茨城の試合だ。今回はその試合の様子を振り返る。

 日立は春に開催されたトップイーストトーナメントでは3位となり、さらに開幕前にはリーグワン神戸から日下太平も移籍してくるなど、その充実ぶりから「東京ガスと丸和のトップイースト2強を切り崩せるとすれば日立ではないか」とリーグ戦開幕前からそのような声が聞かれた。しかし結果的には惜しい試合をものにできず、1勝6敗という意外な結果で最終節を迎えることになってしまった。とは言え最後の2試合では丸和に対し24-31、東京ガスには20-31と、シーズン後半になってようやく「らしさ」が見えてきたところだ。この最終節は自分たちのラグビーの総仕上げをしてシーズンをしめくくりたいところだ。

 一方の明治安田もAグループに昇格した勢いに乗って上位を伺えるかと思いきや、こちらもここまで1勝6敗と勝ち星を取りきれないシーズンだった。日立に対しては前回こそ24-21で辛くも勝ったものの、春の対戦では28-39とやられている。ここ2試合の日立の出来を見るとプラスアルファの何かがないかぎり、明治安田の勝ちは簡単には手に入りそうにない、そう見えた戦前の両チームであった。

 前半12分にファーストスクラムを組むと、やはり日立のスクラムが強い。明治安田を押し込み22m内へ侵入するが、ここは手痛いノックフォワード。14分にもペナルティからトライライン1mまで迫るもブレイクダウンでノットリリースを取られ後退。いずれも明治安田ディフェンスの出足が相手のミスを誘った結果だ。

「もう、今日は気合いと根性だ。それしかない、とメンバーには言いました」。試合後に明治安田高橋優一郎(日本大)キャプテンはそう振り返る。

 高い強度とミスの少ない高いスキル。そんな日立を相手に、やれることは全てやってきた。メンバーで話し合えることはすべて話し合った。それでもまだ足りない。残された秘策は、なんとも泥臭い昭和の体育会風の掛け声だったというわけだ。だがここまではその秘策が実際に効果を発揮している。

 しかし日立も止められてばかりではない。23分にはまたしても日立がスクラムから得たペナルティを起点に相手22mライン付近まで迫りここでPGを獲得。日立SO田中健登(立命館大)がショットを決め、3-0とようやく得点が動いた。

 明治安田もすぐさま反撃、こちらも22m内のゴールポストまで格好の位置でペナルティを獲得。ここは蹴れば間違いなく3点という場面だがショットではなくサインプレーを選択、SH上村龍舞(慶應大)が咄嗟の判断で自ら持ち込みグラウンディングするがあと数センチのところで日立No8積賢佑(流通経済大)が止め、これをしのぎ切る。

明治安田SH上村龍舞のグラウンディングはライン手前数センチで届かず。止めたのは日立NO8積賢佑、マイブームは観葉植物

 これで明治安田のチャンスは潰えたかに見えたが、直後の29分、LO相部開哉(慶應義塾大)がディフェンスを上手く引きつけてWTB加納遼大(明治大)に渡してトライ。コンバージョンキックはチームの主務も務めているFB髙木陽太(日本体育大)。試合前にとかく役割の多い主務を兼務することは思っている以上に本人の負担は大きいだろうが、ここはきっちりと決め7-3と明治安田が逆転。

 前半終了間際には日立田中が10mライン外側からのPGをふたたび決め7-6、ここで前半終了となった。

「日立さんは素晴らしいチーム。我々はやってきたことしか出せない。試合前にはとにかくディフェンスだ、という声をかけました」。明治安田長田悟HCは、試合を振り返る。

 後半に入って長田のゲームプラン通りに、日立のアタックはことごとく芽を摘まれてしまう。後半10分にはラインアウトからトライライン直前まで迫るも、フェーズを重ねるごとにじわじわと押し返され攻めきれなかった。

 ただ、明治安田にとって誤算があったとすれば、日立のディフェンスもまた明治安田をよく止めたという点だろうか。18分過ぎにこちらもトライライン1mまで迫るも長い攻防の末、日立CTB吉澤雅樹(立教大)が相手を仰向けにする強烈なタックルでノックフォワードを誘いこれを退けた。

 結局後半は両チームディフェンスがよく機能しスコアレスのまま終了、明治安田が前半の1点差を守りきった。派手なトライシーンは1つしか見られなかったが、出足のよいタックルと球ぎわのBKの競り合いなど、両チーム互角の攻防は観客を大いに沸かせた。

裏をついた日立のキックをFB小田嶋生吹(大東文化大)と競り合う明治安田WTB加納遼大(明治大)。ここは7人制代表経験もある加納が競り勝つ

 この試合は公式発表で1971人の観客が秩父宮に詰めかけた。ちなみにリーグワンディビジョン3の2024-25シーズンの平均入場者数が1126人だったことを考えると、トップイーストの動員としては十分な合格点だろう。

 この日でレギュラーシーズンの全日程を終えたトップイースト、Bグループの優勝は横河武蔵野アトラスターズ、2位は秋田ノーザンブレッツとなっている。この結果、入替戦は日立vs横河、明治安田vs秋田。Bグループ2チームとしては捲土重来を期した1年をしめくくる戦いになる。特に明治安田と秋田は昨シーズンの入替戦と逆の立場での対戦となる。

「秋田さんはフィジカルの強いチーム。リスペクトを持って我々のラグビーをやるだけです」
 
 明治安田長田HCは入替戦に向けた意気込みを語ってくれた。入替戦は日立vs横河は12月20日茨城会瀬スポーツ広場、明治安田vs秋田は12月21日明治安田グラウンドで開催される。

 なお、B-Cグループ入替戦は12月21日、ライオンファングス(B5位) vs JR東日本レールウェイズ(C1位)、大塚刷毛製造 BRUSHES (B4位)vs BIG BLUES 八千代 ベイ東京(C2位)の対戦で開催される。リーグワンNECからグリーンロケッツを継承して注目のJR東日本だが、レールウェイズは100年の歴史を持つチームとして今後も存続しトップイーストの頂点を目指すという宣言が出されている。この会社の取り計らいに対し入替戦でまずは応えたいところ。同じく名門IBMラグビー部を継承するBIG BLUESと合わせてBグループ昇格を果たすのか、こちらも注目してゆきたい。

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