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東京ガスを最終戦で下し、トップイースト2025シーズンはAZ-COM丸和MOMOTORO’Sが優勝!

2025.12.11

優勝の喜びをサポーターと分かち合う丸和フィフティーン(撮影:鈴木正義)

 9月から熱戦の続いたトップイーストも、いよいよ最終節を迎えた。全勝のAZ-COM丸和MOMOTARO’Sと、勝ち点3でこれを追う東京ガスブルーフレイムス。前回の対戦は22-20で丸和が制したが、後半40分を回ってからの逆転勝利という展開が物語るように、両チームの実力は拮抗している。会場の秩父宮はトップイーストの試合としては異例の5000人を超える両チームのサポーターで埋め尽くされ、これ以上ない舞台で両チームが優勝を決することになった。

「この試合はリーグワン云々よりもまずアタック力のある東京ガスさんに勝つこと。そのためにはディフェンスだと思っていました」

 丸和のGM兼監督の細谷直は試合後の記者会見でそう振り返った。

 試合開始のホイッスルが鳴ると、すぐに丸和が動く。FBリコ・サイムが13分にトライ、22分にもリコから受けたボールをWTB坂井裕生(八戸学院大)が持ち込み2トライ目。リコを中心とした攻撃で東京ガスのディフェンス陣を翻弄する。

 しかしこの後、丸和・細谷監督の言葉通り東京ガスはLOセコナイア・ブル(日本大)、CTBタウタラタシ・タシの2人の大型外国人選手を中心に強烈なアタックで丸和陣地に迫る。東京ガスの強みは基本に忠実なプレーを高い強度でミスなく繰り返してくることだ。現在リーグワンに加盟しているヤクルトやセコムもトップイースト時代にはこの王道のプレースタイルで大いに苦しめられてきた。

 前半31分、東京ガスNO8鈴木達哉(慶應大)の突破からPR春野星翔(日本大)につなぎ反撃のトライ。7点を返し前半は7-15で折り返した。

反撃のトライにつながる東京ガスNO8鈴木達哉の突破。好きな食べ物は冷やし中華

 後半に入って東京ガスがPGで3点を加え10-15。1トライ決まればひっくり返せる状況が続くが、東京ガスはここからなかなかトライゾーンが遠い。

 日立には24点、明治安田には31失点と今シーズン失点の多い試合が目についた丸和だが、この試合のディフェンスは違った。実は前日にメンバーたちが刺激をもらえる出来事があったようだ。

「前日にNECとノンメンバーのBチーム同士で試合をやったんです。ノンメンバーのことを我々はエナジーと呼ぶんですが、そのディフェンスがすごかった。それを見た今日のメンバーがデジャブのようにそれを繰り返してくれました」(細谷)

 丸和は2021年にはトップイーストCグループだったチーム。そこからわずか5シーズンでリーグワン入りに手をかけるまでに成長した。と聞くと、外部から補強した選手と入れ替えが行われたからではないかと思うかもしれないが実際は違う。この試合のスタメンは外国人を除くとほぼ生え抜きメンバーで構成されている。生え抜きの選手たちの急成長がこのチームの原動力となっているのだ。

 その生え抜きメンバーから、後半10分にフロントロー3人を総入れ替え。その顔ぶれたるや、2015年W杯メンバーのHO木津武士(東海大)、キヤノン、神戸、豊田自動織機で活躍したPR五十嵐優(東海大)、PR東恩納寛太(帝京大ーキヤノンーNEC)という布陣だ。これだけ実績のあるメンバーがリザーブにいること自体、生え抜きメンバーの成長の大きさを物語っているとも言えるが、ここから丸和のセットプレーがさらに安定感を増し、東京ガスの前に立ちはだかった。

 そして後半34分、先ほどとは逆に丸和WTB坂井からのパスをFBリコがもらい、試合の流れを決定づけるトライを挙げる。リコはここまで3つのトライ全てに絡む活躍ぶり。さらにSOフレッチャー・スミスがダメ押しとなるトライを挙げ、10-32と得点力の点では外国人BK2人が存在感を示した。

WTB坂井にパスを要求するFBリコ、このままトライゾーンに飛び込む。休みの日はプレステに没頭

 繰り返すが、丸和はつい4シーズン前にはCグループにいたチームだ。いや、さらに遡ると、2014年には関東社会人リーグの3部、要するに社会人リーグの一番下のカテゴリーからここまでやってきたのだ。
トップイーストBリーグに昇格した年(2022年)には、ラグビー部の蜂谷隆部長が社内で「リーグワンを目指す」と宣言した。おそらくこの時には周囲からは冷ややかな反応もあったかもしれない。しかしその視線を跳ね返し、リーグワンに手が届くところまで這い上がって来たことが、そのままチームの歴史だ。その歴史の主役は決してビッグネームばかりではない生え抜きの選手とエナジーメンバーだ。

 今や世界のトッププレーヤーが集うリーグとなったリーグワンに、全く違う成り立ちのチームが誕生しようとしている。

「こんなチームがリーグワンに1つくらいあってもいい、と思ってもらえたら嬉しい」。細谷監督はチーム紹介ビデオの中でそうコメントしている。

 試合は10-32で、戦前の予想よりも大差をつけて丸和が2年連続の優勝を飾った。この勢いのまま全国社会人トーナメントを制することになるのだろうか。一方の東京ガスも2位ながら大会に駒をすすめる。両チーム順当に勝ち進めば、再び決勝で相見えることになる。

 敗れたとは言え、東京ガスが脅威であることには変わりはない。そのことを一番分かっているのは丸和のフィフティーンだろう。試合後の会見で眞野拓也(京都産業大)は全国トーナメント優勝を誓いながらも、その目に油断の色は見られなかった。

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