気が抜けないようにしたい。長田智希のスタンスだ。
今夏から継続的にラグビー日本代表の活動へ加わり、10月中旬からの約1か月半は国内外で上位国とぶつかるキャンペーン、およびその事前合宿に参加した。
11月下旬に帰国した。
勤続疲労が懸念されてもおかしくない身長179センチ、体重90キロの26歳は、約1週間のオフを経て所属先の埼玉パナソニックワイルドナイツへ合流した。宮崎でのチームキャンプへ帯同した。
14日の東京・味の素スタジアムの初戦へ順調に調整を進める。2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京をにらむ。
何より6月上旬のシーズン終了まで、一定の張りを保っていたいという。
「出してもらう試合には出て、しっかり戦いたいです。どちらかというと、そのほうがが調子は上がる。休むと、(状態は)落ちると思います」
さかのぼって今度の秋は、通算キャップ数を26にまで積み上げた。オーストラリア代表、南アフリカ代表、アイルランド代表、ウェールズ代表、ジョージア代表との連戦の全てにWTBとして出た。
星取表を1勝4敗としたこと、唯一の白星だった最後のジョージア代表戦もラストワンプレーで辛くも逆転勝ちだったことには「求めている結果を得られなかった。納得いかない部分が多かった」。もっとも鋭い走り、空中戦でのタフな競り合いで光ったのを踏まえ、「個人としても成長できた」と頷く。
「やっとテストマッチ(代表戦)で自分の力を出せるようになったかなと。ラグビーのスタイルが(国内と)異なる――簡単に言うと、キッキングゲームが多くなる――ことで、僕(キックが飛んでくるWTBの位置)にかかってくるプレッシャーが全然、違うのに対し、適応できるようになった。チームに貢献できるようになってきたかなと」
チームの結束力も感じた。大敗続きの昨秋と比較して述べる。
「練習はハードだったのですけど、ひとつひとつの試合にどう勝つかをチームとして考えてきた。途中、途中の『しんどいなぁ…』という気持ちは特になく、チームのまとまりはあったなぁと」
あくまで全体を覆っていた「雰囲気」への所感だとし、こう続けた。
「去年はちょっとしたネガティブな空気、チームへの不満、試合への不安が(漂っていると)、やっている僕たちも感じるくらいでした。ただ今年はひとつひとつのゲームへのプランが明確になって、それへの自信を持って(実戦に)臨めた。結果を見れば足りていないので、まだ成長する必要はあるかと思いますが」
来年以降はテストマッチが増える。27年のワールドカップオーストラリア大会へさらにギアを入れたいところだが、まずは目の前の国内シーンを見据える。
ワイルドナイツは旧トップリーグ時代から通算5度、日本一に輝くも、過去3シーズンは頂点から遠ざかっている。
特に昨季は、リーグワン初年度から出ていたプレーオフ決勝の舞台にも立てなかった。3位決定戦も落とした。
厳しい現実を、各自が受け止めていると長田は見る。
「チームとして変化させていかないといけない。それを自分事として捉えるようになった。それまではリーグ戦で順調に勝ちを重ねて、決勝にも行って、最後に負けはしたけど、何となく次の年も上に行ける…という感じがどこかであったと思うんです。でも去年は準決勝も負けて、自分たちで掴みにいかないと優勝は転がってこないと改めて感じた。それぞれが責任感を持って、勝つためにやるべきことを考え、やれるようになっているのかなと」
組織を進歩させる流れで、自身もパフォーマンスの質を高めたいという。
かねて中心部のCTBを主戦場としていたが、端側のWTBで起用されることが増えたのを踏まえてこのように語る。
「前提としては、チームに求められたポジション(を務めるべき)というのが、僕のなかではある。それは、おそらく今年はWTBだろうなと。WTBとして役割を全うする。リーグのなかでも他選手との違いを見せたいです」
社会人1年目から社員選手の肩書き。国際舞台に立つようになったいまもその立場を保つ。世界中を転戦するタフなサラリーマンだ。
