ラグビー界で11月23日の代名詞といえば、大学の古豪の名勝負・早慶戦、というファンは多いだろう。今年は同日に千葉・舞浜で開催されたトップイーストCリーグのJR東日本レールウェイズ対JAL WINGS戦、つまり陸と空のダービーマッチも大いに盛り上がった。
同リーグで首位を走るレールウェイズ。昨年は2位で上位リーグとの入替戦に臨むも11点差で涙を飲んだ。今年にかける想いはただならぬものがある。一方、JAL WINGSは昨年1位でリーグを制覇するも、唯一敗れたレールウェイズへのリベンジに燃える。
そんなダービーマッチを一目見ようと、両チーム多くのサポーターが駆け付け、観客席はJR東日本のシンボルカラーの緑とJAL WINGSの赤に染まるなかキックオフ、一進一退の攻防が続く白熱した展開となった。
序盤はJAL WINGSが敵陣に攻め込むもゴールラインが遠くスコアにつながらないなか、レールウェイズが力強いスクラムと展開力で得点を重ねた。前半は21-10でレールウェイズがリード。
後半、JAL WINGSはペナルティキックで着実に点差を詰め、後半40分で28-24と、その差はわずか4点に。緊迫したロスタイム、最後はレールウェイズが渾身のトライを決め、35-24で激戦を制し、最終戦を残してトップイーストCリーグ初優勝を決めた。
試合後には、両チーム多くのサポーターが選手と交流を図り、応援に駆けつけてくれた職場の同僚や上司、友人たちとの会話を楽しんだ。
このダービーマッチ、実はキックオフ2時間前にもうひとつの熱い戦いが繰り広げられていた。両チームのOB選手によるOB戦である。
鉄道と航空という公共交通機関に従事する社員たちがラグビーを通じて交流し、そして、双方の現役選手たちへのエールも込めて開催されたという。
JR東日本には、レールウェイズのほかに、それぞれのエリアで会社の福利厚生の一つとして活動している12チームの中から、東京、横浜、八王子、大宮、千葉の各エリアに所属する社員が集まった。一方、JAL WINGSは1954年に創部した歴史あるチームで、今回は4人の60代選手を筆頭にOBが参加した。
下井氏は、鉄道ラグビー100周年を飾ったJRラグビー・フットボール全国大会(2025年9月)でレフリーを務められ、今回のレフリーも快諾されたという。
OB戦で主審を務めた下井レフリー。
久々の試合に挑むOB選手からは緊張感が伝わるなか、名レフリーによる公式戦さながらのブリーフィングが行われる。
「OB戦とはいえ、ペナルティの状況ではカードを出します」
張り詰める空気のなか、下井レフリーの胸元から出されたカードは赤でも黄色でもなく、交通系ICカードの「Suica」とJALブランドのクレジットカードの「JALカード」であった。名レフリーの巧みな話術で選手たちの緊張は一気にほぐれキックオフを向かえた。
前後半15分で行われたOB戦。前半プレーするメンバーは年齢順に選考され、60代の選手がピッチに立ったが、キックオフ直後から年齢を感じさせない激しいプレーが繰り広げられた。ピッチサイドでは歴代の選手をよく知る両チームのOBによる軽快な実況が行われ、会場を盛り上げた。
JR東日本 OBチームリードの7-5で前半を終えると、両チームメンバーを入れ替えた後半はさらに熱い戦いとなり、力強い突破や激しいタックルの応酬となった。両チーム得点を重ね、14-12のJR東日本OBチームリードでロスタイムを迎えると、JAL WINGS OBチームが敵陣ゴール前で連続攻撃を重ね、最後は右隅までボールを運び逆転トライを決め、JAL WINGS OBチームが劇的勝利を収めた。
試合後は両チームで集い、健闘を称え合うとともに、チームメイトとの久々の再会の時間を楽しみながら後輩たちの試合を観戦したようだ。
この2つの熱戦は、単に勝敗を決めるだけでなく、鉄道と航空という日本の大動脈を支える両社にとって、かけがえのない交流の機会となったはずだ。ラグビーを通じて世代を超えたチームの一体感を醸成し、他業種の仲間と敬意を持って交流する。この熱い絆こそが、両社の共通の使命である「安全」への意識をさらに高め、未来へつなぐ糧となるに違いない。
