「『活躍したい』という気持ちがすごく強かった。だから、毎日のように自主練習を継続してやってきました」
池渕紅志郎は東洋大の2年生。己と向き合い続けた時間を信じる。
11月16日、関東大学リーグ戦第6節の流経大戦に、フルバックで先発出場した。
試合は33ー33の同点でロスタイムに突入。何度か攻守が逆転する中、狙いを定めた鋭いタックルで相手ボールを弾き飛ばした。
「ゲインされたらしんどい場面。外には突破力のある選手がいたので絶対にボールを渡したくない、詰めるしかないと思いました」
ディフェンスで圧力をかけ、敵陣深くでマイボールに。そして迎えたラストプレー。
SHからフラットにパスを受け、抜け出し、勝ち越しのトライを挙げた。
「最後のアタックラインは全員がトライを取る気で走っていた。みんながくれたトライ」と感謝の言葉を口にする。
自ら左端のゴールキックも沈め、試合を締めた。まもなく、プレイヤー・オブ・ザ・マッチの表彰を受けた。
地道に積み重ねた努力が、光を放った瞬間だった。
池渕は悔いの残る春を過ごしていた。
本職のスタンドオフなどで先発起用されるも、プレーに自信が持てなかったという。
「コンバージョンを決めきれなかったり、テンパって動けなくなったり。悔しい思いで終わってしまいました」
福永昇三監督からメンタルの改善を求められ、自信をつけるために自己研鑽に励んだ。
「以前から練習終わりや夕方の時間に何人かで自主練習をしていましたが、春シーズンはその成果を出し切れなかった。どこかで他の選手よりも量を増やさないといけないと思い、朝練の前にトレーニングするようになりました」
時間を惜しまず、妥協しない。チームの期待に応えたいからだ。
「メンバーに選んでいただいている以上は、自分が強くならないといけない。そういう気持ちを持って練習しています」
その姿勢は、監督の目にも映っていた。「気持ちが強く、練習量もチームトップ。東洋を象徴するような選手」と高く評価する。
「すごく嬉しかったです。隠れて自主練をするのが好きで、見られていないと思っていたのですが…。監督は見てくださっていました」
この秋はデビュー戦となった開幕戦以降、1試合を除いて先発出場を続けている。
試合を重ねる中で、確かな自信も得られた。
「一番得意なプレーはタックルです。それを生かしたプレーができるようになってきました。自信を持つとミスも少ないですし、土壇場でも良いプレーができます」
ただ流経大戦を終え、反省も忘れない。
「前半は得意なタックルを外してしまう場面がありました。最初から良いプレーができるように、もっと自主練をして自信をつけていきたいです」
東洋大はリーグ戦初優勝をかけ、11月30日に東海大との最終節に臨む。
月が替われば全国大学選手権だ。
ヘッドキャップをつけた背番号15は、タックルでチームに貢献したい。
「東洋といえばタックルです。ディフェンスが得意な自分が一番タックルできる存在でいないといけません。チーム1のタックラーを目指します」
