この舞台を待ちわびていた。
明大ラグビー部3年の大川虎拓郎は11月16日、加盟する関東大学対抗戦Aの帝京大戦にFLで先発。冬の大学選手権で4連覇中の強豪へ戦う権利を得た。
「フィジカルが1番強い帝京大さんに、自分の持ち味であるディフェンスで勝ちたい」
宣言通りだった。東京・秩父宮ラグビー場のフィールドで、向こうの得意なコンタクト合戦で光った。
前半21分に先制点を与えるまでの約6分間、自陣ゴール前で耐えたなか、刺さって起きて、また刺さった。
15分頃にあった7フェーズ中4度のタックルを決めた。その後、ペナルティーキックから繰り出された留学生選手の単騎の突進へも、先陣を切って対抗した。
「頑張りました。順目(同一方向への攻め)への運動量は、FLの仕事。(強いランナーには)自分が行かないと」
身長186センチ、体重104キロの恵まれたサイズを誇り、出身の東福岡高では主将として高校日本一を経験。一時は単位取得と自主練習時間の確保とのバランスに苦労したが、今夏までに問題を一段落させるや調子が上向いていた。
トレーニングやメンテナンスに時間を使いやすくなったためか、最近では「自分の身体をよく知れている」という。
「ストレッチしたり、しなかったりを身体に合わせながら。前に比べて、試合への(状態の)持っていき方がうまくなったかなと」
かくして地上戦で奮闘。ラストワンプレーで逆転して21-17で白星に歓喜した。上向きなのはクラブも然りだ。
「やることがシンプルになったら、強いです。はい」
2018年度までに全国優勝13度の名門は、この秋、苦しんでいた。
対抗戦では筑波大との初戦を24-28で落とし、直近の慶大戦では24-22で勝利も不完全燃焼だった。
折しも控え組は、大学ジュニア選手権で好調を維持していた。約80名の部員のうち、1軍のゲームに絡めないメンバーが「これなら自分たちが出たほうがよい」と考えているのを主力組も知った。
「危機感を与えてくれた。戦わなきゃいけない気持ちにさせてくれたのが大きいです」と大川。それまで司令塔団ら一部の主軸が決めていたゲームプランの策定に、自分たちハードワーカーも参加した。
やや希薄になりかけていた人と人との繋がり、個々の当事者意識を見直したうえで、かつ、着実にエリアを採る簡潔な戦法を構築。強者の群れがまとまり、躊躇なく戦えたことで難敵を破った。
覚醒したグループの7番は言った。
「皆で考えることで、皆が同じページに乗って、いいラグビーができる」
12月7日には東京・国立競技場で、対抗戦ラストゲームを迎える。
早大とぶつかる伝統の早明戦だ。
その次には頂点を争う選手権があり、大川は「タックルでは一発で止められなかったシーンもある。ベースアップを。チームはこの戦い方が一番強いとわかったので、いくつかあったミスをブラッシュアップしたいです」と展望する。
