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【現地記者リポート】24-23の辛勝をどう受け止めた? ウエールズ側の視点

2025.11.16

試合直後のシーン。ガックリと肩を落とす日本代表の選手たちに対し、ウエールズ側には歓喜の輪が広がった(撮影:井田新輔)

ラグビー日本代表戦 4週連続WOWOWで!
11/22(土)午後8:45「日本vsジョージア」ライブ配信

 前週のアルゼンチン戦に28-52と大差で敗れ、日本戦の後にはニュージーランド、南アフリカとの対戦を控えるウエールズ。日本戦前時点のワールドラグビーランキングは12位で、13位の日本はこの秋戦う相手の中で唯一の格下の相手だ。とはいえ、夏の日本遠征では1勝1敗であり、実力は拮抗しているというのが妥当な見方だっただろう。

「僅差の試合になるだろう」
「ランキング12位の座をかけた、実は大事な試合だ」
「ところで、エディーは日本でどう見られているんだ?」

 試合前の、現地の記者たちの言葉だ。12位が大事な理由は、12月に行われる2027年ワールドカップの組分け抽選。そこで有利となるバンド2までに入るためには、秋の代表戦を終えた時点で12位以内にいる必要があり、この日の両国の戦いはワールドカップを見据える上で非常に重要な試合だった。

「まずは、選手たちの精神的な強さと勇敢さを誇りに思います」

 途中出場のSOジャロッド・エヴァンズのラストプレーでのPGにより逆転勝利を収めたウエールズのスティーブ・タンディ監督の試合後の言葉だ。両チームともにややミスの目立つ試合だったが、拮抗した展開の試合の最終局面で見事に勝負をモノにした。若いチームを率いる監督として、精神面を称えたかったのだろう。

 12位の座を保ったことについては「やるべきことをしっかりやった」と満足気なタンディ監督だったが、「結果を出したことはすばらしいですが、今後もパフォーマンスを向上させていかなければなりません」とも強調した。

 夏の日本遠征時に続きキャプテンを務めたHOデヴィ・レイクは、「夏の対戦時に比べて、今日の日本は多くのキックを蹴ってきたと思います。先週の試合を見てのことだと思いますが」と、この日の日本の戦術についてコメント。ウエールズは前週のアルゼンチン戦で空中戦でかなりやられており、この日も日本のキックをうまくさばいているとはいえない出来だった。

「ですがとにかく、勝ち癖をつけることが大事」とこの日の勝利の大事さを強調したレイク。この他にもインタビューに答えたSOダン・エドワーズ、CTBマックス・ルウェリンともに「勝ち癖(Winning habit)」という言葉を強調していた。

 ウエールズは今年夏の日本遠征第2戦で日本に勝つまで、同国史上最悪となるテストマッチ18連敗を記録。前週行われた秋の初戦ではアルゼンチンに大敗しており、とにかく勝つために必死で戦っていた。

 途中出場ながらラストワンプレーで勝負を決めるペナルティキックを任されたエヴァンズは、この重大な任務を冷静に振り返った。

「こういうプレッシャーのかかる状況を想定したキックの練習はもう何年もやっています。蹴れといわれれば、喜んで蹴ります」

 不振の続く時期に代表デビューを果たし、チームの仲間たちと何度も苦渋を舐めてきたルウェリンは、「このチームはとにかく勝利への執念が強過ぎて、力み過ぎてしまうこともある」とコメントしていたほどだ。チームには、1年半ほどアメリカでNFLに挑戦したWTBルイス・リース=ザミットというスター選手も戻ってきており、ボールを持った時にはプリンシパリティスタジアムの観客席がおおいに沸いた。ウエールズには現在4つのプロクラブがあるが、財政難などの理由からこれを3チームに減らす予定が発表されている。

 人口300万人ほどのウエールズにとって、ラグビーはダントツの国技で、代表チームの戦績は国民的な話題となるほど。とにかく今日は僅差でも何でも勝ててよかった、というのがウエールズラグビー界の正直な気持ちだろう。

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