ラグビーリパブリック

ゴール失敗で惜敗も進歩に手応え。東洋大・林星安が正司令塔になるまで。

2025.11.14

林星安[東洋大/SO](撮影:長岡洋幸)

 27-28。一昨季まで6連覇の東海大に2シーズン続けて勝つには、わずかに及ばなかった。東洋大の福永昇三は、部員に語り掛けた。

「また、強くなりましょう」

 11月3日、東京・スピアーズえどりくフィールド。加盟する関東大学ラグビーリーグ戦1部の5試合目に臨んだ。

 全勝同士の首位決戦だった。持ち前の分厚い防御、モールの威力を長所に接戦を演じた。そして向こうのイエローカードに伴い、最後の攻撃局面を数的優位で迎えた。しかし、ここで仕留め切れなかった。

 さらにコンバージョンは2本失敗。ただ、キッカーを務めたSOの林星安は「試合中に気負いがちですが、気負わなかった」。思うに任せなかったことを引きずらなかった点を前向きに捉える。

 フィールドに立てる喜びを感じる。苦労してきたからだ。

 出身の東京・目黒学院高時代からスピード、各種スキル、位置取りに秀でた。複数ポジションでスタンバイできるとあり大学でも期待されたが、しばらく1軍に定着できなかった。

 部員数約60人。国内トップの体育会ラグビー部にあってやや小規模な集団にあって、「メンタルを保つのは難しかったのですが、素敵な同期に恵まれた。辞めるとか、下のチームで適当にやるということはなかったです」と林。雌伏の期間、福永監督にはこう諭されてきた。

「ひとりでやらないように。あとは冷静でいること」

 その言葉を肝に銘じたことで、次第にフィールド上で広い視野を保てるようになった。「変な話、相手に絡まれても構わない」。モデルチェンジの甲斐あって、ラストイヤーは司令塔に定着した。

 すると、今度の東海大戦では風下で「50・22」のキックを決めるなど、個人技でも光るようになった。落ち着いて、軽く足を振り抜いた結果だ。

「運をよくするために、ごみ拾いを。(万事を)疎かにやらない」

 チームは現在8チーム中2位。16日には神奈川・城山陸上競技場で、3位の流経大とぶつかる。

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