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日本代表入りした明大・竹之下仁吾は、「自分の色」で勝負したい。

2025.11.12

竹之下仁吾[明大/FB](撮影:長岡洋幸)

 この世に完璧なものなどない。

 その真実を受け入れるつもりは、竹之下仁吾にはなかった。

 今夏、日本代表に入って対ウェールズ代表2連戦、パシフィック・ネーションズカップのツアーに参加していた。明大3年目のシーズンには、自らに期待をかけて臨んでいた。

「レベルの高いところでやらせてもらったので、そのパフォーマンスが求められると思いますし…」

 11月2日、東京・秩父宮ラグビー場。関東大学対抗戦Aの慶大戦にFBで先発した。

 前半29分には、自陣から勢いよく攻め上がるさなかに左奥へ好キック。33分にはトライラインを背に約50メートルの長距離砲を放った。

 35分には高い弾道を好捕。随所で光った。しかし、本人の表情は優れない。エラーがあったからだ。

 後半開始早々にハーフ線付近左で、慶大が蹴ってきた球を後逸した。

 続く7分には自陣中盤左で、上空でのボール争奪戦に競り負けた。距離感を探りながら跳んだところ、出足の鋭い2名のチェイサーのうちひとりと交錯。落球した。

「ちょっと、『捕りに行けないな』と(跳躍を)迷ってしまって…というところがあった。僕が捕っておけば、もうちょっと流れを持ってこられたかなと」

 後半26分、1年生で爆発力のある古賀龍人と交代した。

 神鳥裕之監督は「仁吾は出場した時間帯にはいいパフォーマンスをしてくれていた。ただ、古賀というインパクトのあるプレーヤーを後ろに置いている。戦略的な入れ替えです」と説くが、退いた側は厳しい自己評価を下す。

「一言にすれば、全然、よくないです。プレー(理想に)が見合っていない。僕が自分を採点する時は『ミスをしない』(が基準になる)。どれだけいいプレーがあっても、ひとつのミスで一気に流れが変わることもあるので。ミスがあるのは仕方がないのですけど、極力、少なくしたいです」

 身長180センチ、体重86キロとサイズに恵まれ、空中戦での強さ、ハンドリングスキルや足技に秀でる。

 ジャパンの一員になったのもあり、注目度は増すばかりだ。いまはリーグワンの複数クラブからラブコールを受けており、進路選択の最中である。

 候補先がいずれも実力のあるFBを抱えているのを踏まえ、大いに悩む。

「どこに行っても、そこで自分が何をするかが一番、大切。どこが成長できる環境かを考えて決めていきたいです。早めに決められれば決めたいですけど、考えれば考えるほど難しくなっていて…。『ここまで!』と期限を決めていけたら」

 もっとも足元は見失わない。同学年のFBで早大所属の矢崎由高が、昨年から代表入りして10、11月のキャンペーンでゲームに出ている点を聞かれても、こう強調する。

「同い年の同じポジションの人が国際舞台に立っているのはいい刺激で、そこを抜かさないと…とは思います。ただ、なるべく自分にフォーカスを置きたいです」

 矢崎は、地元である大阪の中学シーンでしのぎを削った相手だ。自身は豊中ラグビースクールから兵庫の報徳学園高、向こうが吹田ラグビースクールから神奈川の桐蔭学園高へ進んでからの経験を踏まえ、竹之下は他者に惑わされぬよう心がける。

「彼は高校1年でブレイク(全国大会で躍動)。僕は試合に出させてもらっていましたけど、それほどインパクトを残せなくて。1、2年生の頃はそのことを意識し過ぎて、しなきゃいけないプレーを見失っていたこともありました。3年生になって、考え、自分の色を出そうとしたらうまくいったところがある(2人も高校日本代表入り)。由高にも僕にも違う持ち味がある。(矢崎を)真似したいところもありますけど、自分の持っている最大限のプレーをすることが大切だと思います」

 独自の「色」で勝負する。16日には秩父宮で帝京大とぶつかる。

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