緊張感がある。
流経大ラグビー部3年の加藤アディナンは、11月16日に加盟する関東大学リーグ戦1部の東洋大戦を見据える。
ここまで4勝1敗で勝ち点22。8チーム中3位につけ、残り2試合で東洋大、東海大と現在の2、1位のチームと順番にぶつかる。
4位の関東学大との勝ち点の差はわずかに3。自分たちとの直接対決を制した関東学大は、ここから下位勢との対戦を控える。
大学選手権へ進めるのは上位3傑のみという条件のもと、追われる者の厳しさを覚えながら言う。
「次のゲームで選手権に行けるか、行けないかが決まってくる」
話をしたのは11日。茨城県内の専用グラウンドでのことだ。
練習のミーティングでは、東洋大の防御を崩す詳細について入念にチェック。WTBが本職でアウトサイドCTBもできる身長174センチ、体重90キロのランナーは、決意する。
「フィジカルをメインに頑張っている。ラインブレイクして勢いづけられれば」
勝敗のほかにも考えることがある。卒業後のリーグワン参戦を目指している。
同級生が就職活動を気にし始めるなか、自身もリーグ戦を目標達成のためのオーディション会場と捉える。
「いまの試合に集中し、色んな人に見てもらいたいです」
ウガンダ人の父と日本人との母の間で、年の離れた2人の姉と育った。小学6年で川越ラグビースクールに入ったのは、ちょうどその頃にラグビーブームが起きていたからだ。ワールドカップイングランド大会で、日本代表が南アフリカ代表を下すさまに惹かれた。
特に憧れたのは松島幸太朗。ジンバブエにルーツを持つアウトサイドバックスだ。
「夢は、ありましたね。似たようなハーフの人でしたし。頑張れば(高いレベルに)行けるかなと」
ここから深掘りするのは、楕円球にのめり込むさなかの心象風景についてだ。
「この見た目なので、小、中(学生)の頃は色々とありました。ただ、その時期もラグビーをしている間は楽しく生活できていました。チームの意識が、高かったので。そういうこともあり、ラグビーは楽しいなと思って続けてきました」
ワセダクラブを経て千葉の流経大柏高に入った。越境入学だ。その頃はFW3列が主戦場とあり、その位置でジャパンとなった相亮太監督の指導を受けたかったのだ。
3年時には松島と似たポジションに転じ、内部進学した大学でのウェイトトレーニングで約10キロも増量した。進歩を実感できる。
社会に出てからも一線級でプレーしたいのは、この歩みが自分だけのものではないとわかるからだ。
「サポートしてくれた両親、監督、コーチへの恩返しのために、いいところ(トップのチーム)でラグビーしている姿を見せられたら。(特に家族には)わざわざ高校から親元を離れ、寮費も払ってもらって…。やりたいことをここまでやらせてくれる親はそういない。感謝しています」
今季好調のラインブレイカーは、「自分のなかではまだベストなプレーが出し切れていない。もっとボールタッチを増やし、アタックの中心になりたいです」。鍛えた己に期待する。
