ラグビーリパブリック

トライ王になることは、チームの強さの証明。小泉柊人[東洋大/HO]

2025.10.22

中条ラグビースクール時代は、同級生にサクラフィフティーンの向來桜子やサクラセブンズの高橋夏未と楕円球を追った(撮影:北川未藍)

「もう、泣いてシーズンを終えたくない。日本一を取って、仲間と、観客席のみんなと笑って終われるシーズンにしたいです」

 小泉柊人はそう誓う。

 昨年度の関東大学リーグ戦1部で”トライ王”に輝いたHOは、今年もその称号の獲得を見据えている。
 だが、その思いは個人の名誉のためではない。

 東洋大が武器としているセットプレー。なかでも、モールは重要な得点源だ。

 そのモールの最後尾を担い、FW一体となって塊を押し込む。
 記録に刻まれるのは自身の名前だが、その過程にはフィールドを駆け回る15人ないし、モールを押すFWの貢献がある。

「自分がトライ王になることは、東洋大のモールがリーグ戦で一番強いことの証明になります。今年もトライ王になれるように、FW全員で頑張っていきます」

 ラグビーとの出会ったのは小学1年時だ。「気づいたら始めていた」というこの競技に、いつしか本気でのめり込むようになった。

 その原動力となったのは「人との繋がり」だったと振り返る。

「ラグビーをやっていると、友だちがたくさんできます。そういったところに魅力を感じて続けてこられたんだと思います」

 高校に進学する際には、大きな決断をした。地元の新潟を離れ、東京の目黒学院に進学したのだ。

「親元を離れることは自分の中ですごく大きな決断でした。上京した時には、ラグビーと本気で向き合おうと」

 地元から遠く離れた地で楕円球と向き合った3年間は、競技人生のターニングポイントだったと語る。

 高校では派手なプレーよりも、チームのために動くと決めた。
 それが、いまの自分を形作る”軸”となっている。

「自分は突出した何かがあるわけではありません。気の利くプレーやディフェンスに力を入れていました」

 高校卒業後もラグビーに打ち込むべく、進学先に選んだのは東洋大だった。

「今後強くなっていくと思っていたチームです。高校の監督(竹内圭介)が東洋大出身でご縁があり、進学を決めました」

 ここで、ラグビー観が大きく変わった。

「ラグビーは気持ちのスポーツだなと。これまでは精神面をあまり意識していなかったのですが、東洋大に入ってからは、人間力や気持ちで勝っているチームが強いと感じるようになりました」

 プレー面でも変化があった。

「高校の時よりも責任感が芽生えました。例えば、ラインアウトのスローイングやスクラムなど、一つひとつのスキルに対して責任感を持つようになって。自分の仕事に対して練習時間を増やすなど、より意識して取り組むようになりました」

 2年時から先発に定着した。そして3年時には17トライを挙げ、リーグ戦のトライ王を獲得(得点ランキングでも2位)。最終学年では、さらなる飛躍を期する。

 ただ、本人は個人の活躍のみならず、仲間とともに強くなってゆきたいという。
「ラグビーは一人でやるスポーツではありません。横との繋がりを意識している」と語り、こう続けた。

「時には厳しいことを言わなければいけない場面もありますが、どうしたら仲間にうまく伝わるかを考えながら日々、コミュニケーションを取っています。FWでは全員が成長する意識を持って、AチームからCチームまで差が出ないように、みんなが同じ量の練習を積むことも意識しています」

 秋のリーグ戦は3試合を終え、昨季の下位チームを相手に全勝。東海大と並び、暫定で首位につけている。

 第3節の法大戦で奪った7トライのうち、モールが起点となったのが4つもあった。
 小泉は三度、トライラインを越えたが、まだ伸びしろがあるという。スクラムの課題を口にした。

「スクラムでは、リザーブが入った時に押せなくなることが何度かありました。リザーブメンバーがどれだけインパクトを出せるかも重要です」

 目指すはクラブ初のリーグ戦優勝と全国大学選手権での日本一だ。高い目標を掲げるからこそ、まだまだぶつかり合い、支え合う。
 まだ見ぬ景色を、仲間とともに切り拓く。

Exit mobile version