ラグビー日本代表のサム・グリーンは、ランやパスの鋭さ、攻めるか蹴るかの状況判断に定評がある。
さらには、プレー中に常に喋り続けるコミュニケーションの力を大切にする。
ポジションは司令塔のSOか最後尾のFBだ。
今年8~9月のパシフィック・ネーションズカップでは、後者のFBで明大3年の竹之下仁吾が帯同していた。
その竹之下は、エディー・ジョーンズヘッドコーチにはグリーンを手本にするように言われていた。自身の働き場でレギュラーを張っていた熟練者に関し、こんなエピソードを明かす。
「エディーさんに『オーガナイズ。声を出し続けること』という課題を言われたことがあって、その時にサムの名前が出ました。(指摘を受けてから)次の練習でサムを意識して見ると、『ハンズ(素早いパス)』とか、『(ライン上の)裏表』とか、プレー中にずっと喋っています。(その時々の動きを)『わかっているだろう』のままにはしない」
指揮官が、自分のことを見習うように若手に伝えている。
その事実を、当事者のグリーンはどう思うか。
10月20日、キャンプ地の宮崎でもオンライン取材で答えた。
「エディーさんがそう話しているとしたら、最高の誉め言葉です。ありがたい。私は若い頃からベストなSO、FBを見てきましたが、彼らは一様にコミュニケーションを取っています。継続的なコミュニケーションは横(隣同士の味方)との繋がりを作るためには重要です。特にラグビーは流れが早い競技ですから」
オーストラリア出身。地元からスーパーラグビーに挑むレッズに在籍した時代は、自国代表で76キャップのクウェイド・クーパーと同僚だった。
2016年に来日し、現行のリーグワンが始まる前のトップリーグへ参加していた折には、ニュージーランド代表112キャップのダン・カーターが対戦相手にいた。2018年からの2シーズン(一部は不成立)、この人は現コベルコ神戸スティーラーズの主軸だった。
いまは静岡ブルーレヴズに所属し、今年ジャパンに入ったばかりの31歳は、伝説的なSOたちの名前を挙げてこう続けた。
「クーパーと一緒にプレーできたことは幸運でした。彼は常にチームメイトと連係していて、自分もそれくらいのレベルにならなければいけないと思っていました。カーターもよくコミュニケーションを。この2人が私のロールモデルです」
25日には東京・国立競技場で、オーストラリア代表とぶつかる。
出場すれば母国と激突することとなるが、特別な感情を挟むつもりはないと本人は強調。「練習してきたことを発揮する。適切な状況判断をする」。全てのラグビーマンが口にするであろう文言を、再三、繰り返す。
ノーサイドの瞬間、どんな気持ちになっていたいか。そう問われても、話すのはノーサイドの瞬間を迎えるまでの心構えについてだ。
「とにかくよいパフォーマンスをすることだけにフォーカスします。私たちは優れたスコッドになってきた。ただ、いましていることはプロフェッショナルスポーツなので、まずは次の試合でベストを尽くす」
ファンの応援、日本人の礼儀正しさのほか、どういうわけか「侍」という言葉が好き。対戦国がどこであれ、愛着のある日本代表の一員としてゲームをするのはいつでも特別だ。