苦い現実を味わった。簡潔に話した。
「まぁ、テストマッチの洗礼を浴びたというか。率直な感じです」
北村瞬太郎は10月18日、ラグビー日本代表が編むJAPAN XVの先発SHとしてオーストラリアA代表戦に臨んだ。
いまは正代表で同じポジションの藤原忍、福田健太の後塵を追う立場にある。この一戦へは、「代表に絡んでいける選手になるための試合」と意気込んでいた。
ふたを開ければずっと圧力を受けた。たくさん攻めた末に得点できずに終えるシーンを重ねた。後半9分に退き、7-71のスコアでノーサイドを迎えた。
お互い正代表ではないものの、「テストマッチ」こと代表戦に準ずるレベルを味わったようだ。
敵陣ゴール前でのブレイクダウン(接点)からきれいに球を出せなかった場面を鑑み、こう続けた。
「最後の最後でいいブレイクダウンを作れず、僕もクリーンに(パスを)出せず、結局、相手の人数が揃っていいディフェンスをされた。1歩、早く(ボールを)出せるか出せないか…。その0.1秒くらい(の差)で(結末が)変わってくる試合でした」
グラウンドを引き上げて時間が経ってからは、工夫次第でもう少し状況を変えられたのではと回想した。なお悔しさが募る。
FWがラインアウトで苦戦していたのだから、ペナルティーキック獲得後は自身が起点の速攻を多用してもよかったかもしれない…。
向こうのコンタクトが強いなか、「意味のないアタックを続けていた」ような感触もあった。次に同じような展開に持ち込まれたら、高い弾道をはじめ多彩なキックを織り交ぜてもよいかもしれない…。
とにかく、悔しい経験を肥やしにする。
今年6月までの国内リーグワンでは、新人賞に輝いた。静岡ブルーレヴズで実質1年目にして主力に定着し、リーグ1位タイの15トライをマークした(プレーオフを含む)。
その後に初選出された日本代表では、7月5日のウェールズ代表戦で初キャップを勝ち取った。福岡・ミクニワールドスタジアム北九州でラスト1分間のみピッチに立ち、24-19で逃げ切った。
もっとも、8~9月のパシフィック・ネーションズカップでは出場登録メンバーから漏れた。
本人は潔い。
「実力で選ばれなかっただけだと思っているので」
現在実施中で11月下旬まであるキャンペーンに向け、ジャパンは10月6日からの4日間でポジション別合宿を実施。本来BKに区分される北村はFWに入り、ひとりでひたすらパスの練習をしていた。
「パスとキックの一貫性が足りないと、エディー(・ジョーンズヘッドコーチ)さんには言われている。そこですね。レヴズでも、代表でも、一貫性が大事。常に同じプレーができるようにならないと」
現在フランス挑戦中の齋藤直人を含め、SHの位置には実力者が揃う。好サポートでフィニッシュもできる23歳は、「ランニングは強み。テンポよくパスを出して、自分の前が空いたら走るというスタイルを貫きたいです」と誓う。