ラグビーリパブリック

リーグワンからトップイーストへ--清水晶大と山梨の挑戦

2025.10.15

清水晶大 クリーンファイターズ山梨SO(関西学院大ー神戸製鋼ー豊田自動織機)



 2025年10月、ようやく記録的な酷暑も落ち着き、ラグビー観戦にちょうど良い季節が到来した。人気の大学ラグビーと共に毎週トップイースト、トップウエスト、トップキュウシュウの社会人リーグでも熱い戦いが繰り広げられている。

 今シーズン末には全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会が開催されるとあって、トップイーストAグループでも、丸和、東京ガスを中心に出場3枠を巡って戦いがヒートアップしている。その過熱の中心はクリーンファイターズ山梨だ。昨シーズンからチームに加わったSO清水晶大(関西学院大ー神戸製鋼ー豊田自動織機)を中心に「まるで別のチーム」と対戦相手に言われるような急成長をとげている。今チームになにがおこっているのか、清水本人に迫った。

--山梨というチームに移籍したきっかけは?
清水:社会人になって神戸製鋼でプレーできたことは貴重な経験でした。ただ、ラグビー選手、アスリートとして咲く花は一瞬なのでゲームタイムを確保することに自分はこだわりました。神戸から織機に移ったのはそれが理由だったのですが、その織機でもチーム事情から出場回数が減ってきたりと、引退すべきか悩んでいました。そのことをクリーンファイターズ山梨にいた先輩に相談していたところGMの相澤さんから声をかけていただきました。自分のことを求めてくれているところでプレーしたほうが間違いなく幸せだと思ったので決断しました。

地元山梨のファンの声援を背にポジションにつく清水

--華やかなリーグワンからトップイーストに移った印象は?
清水:昨年の富士フイルム戦が最初だったのですが、正直始まる前は「どんなもんやねん」と思っていましたけど、いざ試合が始まってみると、リーグワンとあまり変わらない。これは明治安田など強豪はどこも同じで、気持ちの強い選手が多くて、今ではリスペクトしかないです。会社員としてフルに仕事して練習にも制限があるなかで、時には残業があったり営業で外に出たりしても、試合になったら一切言い訳せずあのパフォーマンス。メンタルが相当強いと思いました。

--山梨というチームが変わったという声をよく聞きますが?
清水:最初はこれまで見てきたリーグワンのチームと比べると、だいぶ違うなと思いました。チームがやると決めたことをやろうともしないチームだなという印象を受けました。こういうことは必ずプレーとリンクしていると僕は思います。コーチがこういうゲームプランで、と言った時に誰も反応しなかったらできるわけがないじゃないですか。
 プレーについても、なんとなくラグビーをやっている選手が多くて、1人1人の役割をこうやってやろうよ、ということを言い続けました。そうするとみんなも聞こうという姿勢に変わってきました。

--気を遣うことは?
清水:もちろんあります。入ったばっかりで言いたいこと言ったらこいつなんだよ、ってなりますよね。信頼を築いてゆくためには、例えば自分がダメな時はここは俺のミスだ、って言って、人に矢印向けてばかりにならないようにしています。そうしているうちにたとえばベテランの高坂平(PR 関東学院大)さんなんか、僕が練習中言いたいことがあると「おいみんな聞こうぜ!」って言って一番前で僕の目を見ながら真剣に話を聞いてくださるようになってきました。あの人の存在は大きかったと思います。

「今は自分のラグビーができています」プレーの話にはやはり熱が入る。

--今はプレー時間も確保でき、自分のラグビーはできている?
清水:そう思います。自分の考えるアタックは100%頭の中にあって、それをみんなにも伝えて、だいぶできるようになってきました。これはプレータイムが80分確保できているからだと思っています。リーグワンで大観衆を前に試合することは華がありますけど、今の方が充実しています。自分はこれを求めていたのだと思います。

--ラグビー以外で山梨で地域活動をしているとのことだが?
清水:山梨の未就学児から小学生の、少し運動が苦手な子供を集めたスポーツ教室を始めました。自分は子供の頃から教わらなくても幸い運動の基盤ができていたので、そのおかげて水泳陸上野球ラグビーと、いろいろなスポーツを楽しめました。今運動が少し苦手な子供でも、ゴールデンエイジといわれる幼稚園から小学生くらいの時期にラグビーに限らず体の使い方とか、運動の基礎を身につけることで将来陸上でもサッカーでもいろいろな選択肢のスタートラインに立つことができます。そういう子供の人生のプラスになるためにこのスポーツ教室はやりたいと思っています。

--今シーズンの目標と、将来の夢は?
清水:まずは今年、チームとしてトップイーストAの3位以上になって全国社会人順位決定トーナメントに出ることを目標に掲げています。今年チームには有望な若手選手が入ってきています。FBの具志堅竣祐、FLの松本雄大と原田季弥、WTB齊藤拓也とウェストブルックアレックス慧南、HOの大森成真、他にもいますが、こうした若手がチームにいいエナジーを与えてくれています。僕の役割として経験や知識を伝えることで、一緒に成長してゆければ目標は十分狙えると思います。

山梨からリーグワンへ。今シーズンはまずは全国順位決定戦を目指す

 もう一つチームには「山梨からリーグワンへ」という大きな夢があります。引退の文字も頭をよぎっていた自分にもう一度ラグビーができる環境を用意してくれた今のチームの山本代表理事、相澤GMには感謝してもしきれない気持ちです。チームの夢に向けて自分のできることを全力でやりたいと思っています。
 現役は長く続けたいと思っていますが、引退後にはやはり指導者になりたいですね。スポーツ教室も将来山梨にちゃんとした施設を構えてできたらと思います。どんな形であれクリーンファイターズ山梨に恩返しがしたいと思っています。

 シーズンの深まりとともにトップイーストの戦いはますます混戦模様となりそうだ。第3節まで共に全勝で好調の東京ガスと丸和、白星にこそ恵まれなかったが自力のある選手が揃う日立、高い規律でまとまる明治安田と、3位以内とする山梨の目標は決して楽なものではない。特に全チームからマークされる清水にかかるプレッシャーは大きい。

 そのことについて聞くと、「僕なんかに注目してくれているなんて嬉しいです」とあくまでポジティブ。そんな清水を中心とした山梨がトップイーストをますます面白くする役割を果たしてくれそうだ。

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