帝京大の相馬朋和監督が、起用の理由を端的に説明する。
「3人目のCTBだと思っています」
2年生の佐藤楓斗が、開幕から3試合連続で背番号11を背負っている。
本職はCTB。相馬監督の思いに頷く。
「自分の強みであるフィジカルを前面に出して、脅威のあるアタック、ディフェンスをする。3枚目のCTBというマインドです」
180センチ、89キロの体躯で真っ向からぶつかり、攻守に渡って前に出る。
WTB挑戦はこの夏からだ。プレーの幅を広げる意図もあった。
「ボールタッチ回数も少ないので、どう活躍できるかはよく考えました。自分が欲しいタイミングでもらえるように、自分のしたいディフェンスができるように、内側の選手と喋っています」
WTBにはタッチラインを意識ながらのランやハイボールの処理など、慣れていない役割もある。それでも、「WTBの気持ちが分かれば、CTBに戻ってからも生かせることがたくさんある」と前向きに取り組む。
「試合を重ねていくうちに不安要素はなくなってきました。まだ100%ではないですが、徐々に成長してると実感しています」
熊本県出身。友人から誘われ、小学4年時に熊本サンデーズRFCジュニアに入団した。
父も宮崎で楕円球を追ったラグビーマンだった。
はじめは「トップ下」を任されていたサッカーと並行していたが、中学からはラグビー一本に。東部中でラグビー部に入った。
「体を当てる楽しさを覚えちゃいました」と表情を崩す。以来、コンタクトが強みになった。
高校は本州に渡った。熊本から初めて尾道に挑戦した。
「コンタクトが好きなので、尾道のタックルに憧れました。文武両道も掲げているので、社会に出てからも困らない人間になれたらいいなと」
勉学も両立した。総合進学コースで「20位ぐらい」を保った。
「尾道は何事にも全力。周りは勉強する人だらけで、自分もしないといけないと。ただただ必死でした」
帝京大への進学は高校1年時の時点で「チャレンジしたい」と思った。
同じCTBで憧れの五島源(現静岡BR)、2学年上のSH赤迫幸知が進んだのも大きかった。
「帝京に行けば自分の夢に近づける確信がありました」
その夢とはプロラグビー選手。ラグビーを始めた翌年に見た、2015年ワールドカップでの日本代表の躍進に刺激を受けた。
「この人たちみたいになりたいなと」
3年時には高校代表に選ばれ、夢に一歩近づく。帝京大では1年時の春から先発機会を得た。関東春季交流大会の初戦でいきなり13番で先発した。
「高校代表よりもプレッシャーは大きかった」と話すも、「これだけ強い人が集まっているチームなので試合をしても怖くない」と感じたという。
「チームの雰囲気もめちゃくちゃいい感じです。気合の入った、キリキリとした雰囲気で、日本一のチームはやっぱり違うなと思いました」
しかし、夏を経て迎えた秋の出場機会は下位チームとの対戦時に限られた(3試合に出場、2試合に先発)。
唇を噛みながら考え、自分の強みをより磨くことに精を出した。
「自分に足りないところがあるから出られていない。それならもっとフィジカルをレベルアップしようと」
加藤慶フィジカルコーチからも発破をかけられ、隙あらばウエート場に足を運んだ。同期のLO福田大和と励んだ。
「本当に毎日やりました。チームがオフの日でも、です。朝にウエートしたり、授業が終わった後すぐにウエートしたり。スタメンで出ている人よりもやらないと出られない。その努力では負けないようにやってきました。数値もすごく上がりました」
同じアウトサイドCTBでレギュラーを張る、1学年上の上田倭士との競争を常に意識した。
「どう超えられるか、どう違いを見せれるか、送られてくるメンバーボードを見て入れ替わってなかったら、次はこうしようと、常に考えてきました」
その成果を試すために、今春はU20日本代表の活動にも参加した。ニュージーランド学生代表と戦った。
「最初は行くか行かないかのところで迷っていた」と明かす。
しかし、「自分より大きいサイズの選手と戦える。自分がどれだけ通用するかを試したかった」と参加を決めた。
「手応えもありますし、足りないものも見つかりました。本当に来てよかったです」
外から刺激を受けて、再び常勝集団の輪の中へ。今季は大学選手権5連覇に、レギュラーとして貢献したい。