ラグビーリパブリック

【ラグリパ×リーグワン共同企画】大籔洸太、“3代目”が書き加える新たなページ

2025.10.09

キレのあるランが持ち味の大籔洸太(提供:トヨタヴェルブリッツ)



 トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)で3年目を迎える大籔洸太にとって、“トヨタVのラグビー”は特別な意味を持つ。母方の祖父、そして父親の大籔正光もトヨタ(当時はトヨタ自動車)のジャージーを着て戦った選手だった。その系譜を継ぐ彼も、家族の歴史を「ほかの人にはないもの」と話し、誇りある緑色に袖を通す。

 そんな家族を持つ大籔であるが、日本代表にも名を連ねていた父から助言を受ける機会は意外に少ないのだという。「たまに少し話すくらいで、基本的には遠くから見守っているという感じです。もしかしたら、あまり細かく言われるとやりにくいんじゃないか……と思ってくれているのかもしれないですね」と話しつつ、「祖父や家族が見て誇りに思えるようなプレーをしたいと思っています」と感謝と責任感を口にした。

 帝京大学から2023年にトヨタVへ加入した大籔は、大学選手権でも存在感を示した選手だ。だがリーグワンでの出場はまだゼロであり、結果を残すチャンスを待ち続けている立場である。

 その中で迎えた9月28日。三重県の熊野市にある山崎運動公園で行われたジャパンラグビー リーグワンライジング2025第1週の三重ホンダヒート(以下、三重H)戦では、キレのあるランを生かして印象的な活躍を見せ、大きなインパクトを残した。

 プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた彼は、三重Hの平野叶翔とともに記念品のジョッキトロフィーを獲得。大籔は左手で、平野は右手でそれを持ち、笑顔で「乾杯」した。

「ラグビーには『バッファロー(※右手でグラスを持っている人は、ペナルティとして中身を飲み干さなければいけない)』という文化があるんです。それを意識して、僕はしっかり左手で持ちましたよ!」と彼は茶目っ気を交えて語った。

 また、平野は浅からぬ縁がある選手でもあった。中部大学春日丘高校出身の大籔にとって、西陵高校出身で2学年下の平野は同じ愛知県で競い合った関係だ。学生時代に切磋琢磨した相手とのツーショットを、彼は「この二人で写真を撮れたということがとてもうれしかったです」と振り返る。

 ちなみに、そのジョッキがどこにあるのかを尋ねると、「副賞になっていた熊野のオレンジジュースを入れて飲もうか……と思っていたんですけど、まだ(オレンジジュースを)受け取っていないんです(笑)。なので、いまは目立つところに飾っています。見るたびに喜びを思い出しますし、もっと頑張りたいという気持ちになります」との答えが返ってきた。

 リーグワンライジングの第2週、静岡ブルーレヴズ戦でも大籔は引き続き先発に名を連ねてプレーした。充実の2試合を戦い終えた大籔は、その感想を「この時期に強度が高い試合ができることは貴重な機会です。リーグワンでの出場時間がない中で、積み重ねてきたトレーニングの成果を出せるチャンスでした。とても特別でしたし、本当にいい大会だと思いました」と語った。そして「自分の強みはランニング。誰が見ても『アイツがボールを持っていたらイヤだな』『やっぱりスピードがあるな』と思わせたいし、ファンが楽しめるようなプレーを心がけたいです」と続けた。

 最大の目標は、12月13日に豊田スタジアムで行われるリーグワン開幕戦に出場し、勝利に貢献することだ。「大きな会場での試合ですし、多くのファンが駆け付けてくれると思います。そこでチームに勢いを与えられるようなプレーがしたいです」と大籔は意気込む。

 祖父と父がつないできた系譜。その物語に“3代目”が新たな1ページを書き加える日は近い。

(籠信明)

Exit mobile version