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【ラグリパ×リーグワン共同企画】反骨精神の小柄なフッカー。豪華な経歴とは裏腹に、強みは「這い上がっていくメンタル」

2025.10.08

172cm98kgのHO福井翔(©︎JRLO)

「めちゃくちゃ楽しみで、ここでやってやろうと思いましたね」
 
 今季、『ジャパンラグビー リーグワンライジング』が開催されることを知ったとき、試合に飢えていた一人のフッカーは、期待に胸を膨らませたという。

 10月4日に行われたマツダスカイアクティブズ広島戦(以下、SA広島)で花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)の一員として先発した福井翔。公式戦はNTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1の第3節、横浜キヤノンイーグルス戦以降、約1年10カ月遠ざかっている(ジャパンラグビー リーグワン ライジングは「公認試合」)。

 昨季をディビジョン2で戦った花園Lにおいて、福井は1試合もピッチに立てず、ベンチ入りさえ果たせなかった。「腰のヘルニアでシーズン前に手術をして、シーズン序盤に復帰しましたけど、そこから試合に出ることができませんでした」。
 
 東福岡高校時代はキャプテンも務め、高校日本代表にも選出。帝京大学時代には日本一も経験している『エリート』だが、豪華なラグビー人生の履歴書とは対照的に、福井の持ち味は『雑草魂』でもある。「帝京大学時代は1、2年生の時にCチームやDチームに落とされたこともありますし、4年のときもリザーブでしたから」(福井)。1学年下には同じフッカーのポジションに今年7月に行われたリポビタンDチャレンジカップ2025のウェールズ戦で日本代表デビューを果たした江良颯が在籍。優勝を飾った2023年1月の大学選手権決勝も江良に代わって送り出されている。

「這い上がっていくメンタルは間違いなく、僕は持っています」
 
 フッカーとしては小柄な172cm98kgの体は、反骨心と向上心で満ちている。
 
 SA広島戦では、小柄なサイズだからこそ生かせるプレーを序盤から存分に披露した。「今季はパスを多く使うラグビーです。自分はハンドリングが武器だと思うので、そこは今日も良かったと思います」。 

 42対28で勝利した花園Lの中で、「アタックとディフェンスで体を張れるのが彼の強み。器用なプレーもできるのでその点で今日はいいシーンがたくさん出た。良かったですね」と今季から指揮を執る太田春樹監督は福井のプレーを評価。「賢くプレーできる選手なので引き続き彼には期待しています。また来週ですね」と次週のレッドハリケーンズ大阪戦に向けての及第点を与えている。
 
 2023年3月、アーリーエントリーで登録されていた福井は三菱重工相模原ダイナボアーズ戦でリーグワンデビューを飾ったものの、花園Lでの経歴は10試合出場のみである。

 “D2デビュー”となる新シーズンの開幕を心待ちにする福井だが、けがが癒えただけでなく、メンタル面でも着実な変化があったという。

 6月9日から7月25日までニュージーランドのタスマン地方に短期留学。本場の空気を吸い、プレー面以外での学びも多かったという。「仕事をしながらラグビーをしたり、何事にも全力で取り組んだりする姿勢が一番の学びでした」と福井は話す。
 
 ラグビー界のエリート街道を歩んできた福井が、いま掲げるのは「グラウンドに立ち続ける」という目標だ。けがに泣いた日々があったからこそ、あえて地に足がついた言葉を口にする。それに、この大会の名称でもある「RISING」は、福井の名前でもある「翔」とも共通の意味を持つ。
 
「今日の結果に満足せず、まだまだ高みを目指して頑張りたいです」
 
 花園Lの小柄なフッカー、今季は「飛翔」するときである。

(下薗昌記)

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