大和田立とNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)との出会いは、彼の高校時代に遡る。
前身のNECグリーンロケッツが、彼の出身地である北海道網走郡美幌町で夏合宿を行い、その際に大和田はNECグリーンロケッツの選手・スタッフからラグビー指導を受けた。当時、いまもGR東葛で活躍する瀧澤直や、2023-24シーズン限りで現役を引退した土井貴弘がプレーしていた。
「タッキーさん(瀧澤)や土井さんからも指導していただきました」
大和田はそう言って、懐かしそうに高校時代を振り返った。
そのときから、すでに大和田にとってグリーンロケッツは特別なチームとなっていた。ジャパンラグビー トップリーグ時代の2014年、帝京大学卒業後の進路にNECグリーンロケッツを選んだのは、このチームに対する思いがあったからだ。
「大学のときに、いくつかのチームから声を掛けていただいたんですが、僕はNECの人にラグビーを教えてもらい、NECのおかげで帝京大学に入れたので、入団して、優勝して、絶対にその恩返しをしようと思いました」
12月13日に開幕する新シーズンは、大和田にとって入団後12シーズン目となる。高校生のときに運命的な出会いを果たし、入団後には前述の瀧澤や土井をはじめ、多くの先輩選手から“GR東葛魂”を注入された。GR東葛への愛情は人一倍強い。だからこそ、新シーズンはGR東葛らしさ全開の熱いプレーを見せたいと大和田は意気込んでいる。
「GR東葛には、我慢して粘り強く戦って勝つという泥臭いイメージがあると思うんです。強い相手にも簡単にラインブレイクされるのではなく、我慢して、我慢して、相手からペナルティをとって逆転する……。そんな我慢強さを、僕が見せていきたいと思います」
そんな“GR東葛らしさ”を見せた試合として、大和田が例に挙げるのが、昨季第12節の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)戦である。
試合序盤にS愛知にトライとペナルティゴールで8点を先行され、前半に関しては終始劣勢だった。この試合、大和田は味方の負傷により前半23分から出場した。ただ、グラウンドに立った大和田がチームの闘志に火をつけたこともあり、粘り強く戦ったGR東葛は15対8で逆転勝利を収めた。
「あの試合は観客の声が本当にすごかったです。熱狂的な応援が自分たちの背中を押してくれたおかげで、ああいう試合ができたと思います」
GR東葛の粘り強さとともに、チームとCREW(GR東葛ファンの総称)が一つになれば、強い相手にも勝てるということを証明した試合だった。そして大和田は「そういう試合を、シーズンを通じて見せていきたい」とも言う。
今年8月、GR東葛を運営するNECは、2025-26シーズンを最後に、チームを譲渡する方針を発表した。そんな背景が、大和田のモチベーションをさらにかき立てた。
「僕はGR東葛で絶対に優勝したいと思ってこのチームに入りました。でもそれはまだ叶えられていないので、今シーズンはGR東葛として戦う最後のシーズン、ディビジョン2ですけど絶対に優勝したいと思い、先日はチームの公式SNSでもその気持ちを発信させてもらいました」
また、今年は師との再会もあった。大和田がNECグリーンロケッツに入団を決めた当時のヘッドコーチ、グレッグ・クーパーが、今季のGR東葛の指揮を執ることになった。
「自分がこのチームで、初めてラグビーを教わったヘッドコーチなので感慨深いですね。節目のシーズンでまたこうして戦えることはうれしいですし、自分も原点に戻るような気がします」
大和田の胸の内に秘める炎は小さくなるどころか、さらに大きく燃え上がっている。12月のリーグワン開幕へ向けて、大和田は自らを練磨し、熱くチームを引っ張っていく。
(鈴木潤)