「リーグワンライジングのような機会があるのは本当にありがたいです。2試合と言わずもっともっと機会を増やしてほしいです(笑)」
九州電力キューデンヴォルテクスの竹部力はルリーロ福岡との試合を終えて、充実の表情を見せた。加入2年目を迎える竹部だが、ルーキーイヤーだった昨季は1試合も出場することができなかった。
「昨季はやり切れなかったし、悔いが残るシーズンでした。自分としてもとても悩んだシーズンでしたし、アピールすることもできなかった」
思うようにいかない日々に悩みはどんどんと募っていった。職場の人たちが応援の言葉を掛けてくれたが、試合に出ることができていない竹部は申し訳ない気持ちになるときもあった。それでも、悩みとしっかりと向き合った。向き合ったからこそ見えたものもあった。
「いろいろな人に相談したんですが、結論としてラグビーを楽しめていないと感じました。自分はラグビーがとにかく好きなんです。悩んでいた時期も楽しむことが一番大事なんじゃないかなと思ったので、初心に帰ることができました」
加えて、自分は人に支えられていることにも気づいた。悩んでいた時期、メンタルが崩れそうになった自分を助けてくれたのは先輩の存在だった。
「このチームに大好きな先輩がいるんですが、本当に良い先輩でそのおかげでいま、しっかりと自分はラグビーができていると感じています。だからこそ、リーグワン初キャップをつかみ取りたいですし、先輩たちと一緒に公式戦のピッチに立ちたい気持ちは強いです」
支えられていることに気づいたとき、それに応えたい気持ちも強くなった。竹部は祖父も父もラグビー選手のラグビー一家で育った。大学も祖父と父と同じ法政大学に進学したが、同じルートを歩んだからこそ、比較されることもあったという。
「当時は比べられることがイヤになるときもありました。周りから祖父や父のことを言われるのですごく気にしてしまって。活躍できていないのにそのことで取材を受けることもあって、『竹部さんのところの息子』という見られ方だったと思います」
ただ、コンプレックスに近い感覚は「大学のときに吹っ切れた。いまはもうプレッシャーには感じていません」という。地元・福岡県に戻ってラグビーを続ける自分に対して、祖父も父も掛ける言葉はシンプルに「頑張れ」という励ましだそうだ。
「その言葉がありがたいですし、小さいころからずっと応援してもらっているので感謝しかないです。試合をしている姿を見てもらいたいです」
選手にとって試合以上にラグビーを楽しめる環境はないだろう。ラグビーを楽しむという原点に立ち戻ったからこそ、試合に出たい気持ちが強くなった。
「試合に出るまでの緊張感がやっぱり大好きなんです。『あぁ、試合をしているな』『試合を楽しめたな』と今回の試合でも思えました。意識したのは何においても楽しもうということ。どんなプレーでも笑顔でやる。良いプレーが出れば仲間と一緒に笑顔を喜ぶ。それができたのは本当に良かったです」
昨季、悩んだ末に立ち戻った「とにかくラグビーが好き」という原点。リーグワンライジングという環境が与えてくれた出場機会は竹部のファーストキャップへの思いを強く刺激した。
「リーグワン初キャップを取ることが目標です。チームとしてはD2の2位以内に入ってD1に昇格することが目標。そこに貢献するためには初キャップをつかみ取って活躍するというのが大前提。まずは目の前の初キャップをつかみ取りにいきたい」
試合という環境が選手に与える価値は計り知れない。確かな自信を得た竹部はその目標に向かってひたすらにまい進する。
(杉山文宣)