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ブラックラムズ山本秀、日本代表入りへ「お手本をやっつけちゃえば、チャンスはある」。

2025.10.04

プレシーズンマッチ狭山RG戦にFLで出場した山本秀[BR東京](筆者撮影)

 居酒屋店員の調子だ。

「『帰れ』。いただきましたね」

 山本秀が、今年8月にラグビー日本代表の国内合宿へ参加した際の逸話を明かす。

 約9年ぶりに復帰して2年目のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、トレーニング中の選手を叱咤激励することで知られる。国際大会のパシフィック・ネーションズカップへ向けた当該のキャンプでも、その様子が見られたらしい。

 やや弛んだような選手がその場を立ち去るよう告げられるシーンは、2012年から約4年間の第1次政権期にもなくはなかった。当時は黙ってその場を立ち去る強者もいたが、’22年よりリコーブラックラムズ東京在籍の26歳は趣が異なるようだ。

「『すみません! もう1回、お願いします!』…って」

 前向きに献身する。「いただきました」の件で伝えたいのは、隙を許さぬジョーンズの情熱と集中力だった。

「エディーさんの凄いところは、本当に選手を見ていることです。これは、あまりよくないことですけど、(人間は)『ちょっとくらい、いいかな』と思うことがあるじゃないですか。例えばフィットネス(走り込み)で、『あとこの5センチを頑張れれば…。でも…』といったところもある。それを、エディーさんが、見ている。その『5センチ』が、試されています」

 190センチの長身で手先が器用。LO、FLと複数の位置を担える。今年初めてナショナルチームに絡んだことで、肉体改造にも手ごたえを掴む。

 もともと体重の増減が多かったが、ジョーンズとそのスタッフにメニューを課されて安定的なパンプアップに成功。だいたい「104キロ」だった体重は「108キロ」となったようで、ターゲットは「110キロ」。上腕を隆起させて言う。

「エディーさんやS&Cのスタッフから『体重を増やそう』『特に腕、肩まわりを大きくしてほしい』と言われていて、取り組んでいます」

 昨季の国内リーグワンではレギュラーシーズン18戦中5回のみの登録も、千載一遇の好機を活かした。今年に入り、ジョーンズ率いる23歳以下日本代表がブラックラムズとした練習試合で出番をもらった。ここで奮闘したのだ。

 5月以降、若手主体のJAPAN XVの活動、正代表入りのための候補合宿で爪痕を残した。その流れで件の夏を迎えた。

「(周りの)メンバーを見ると、有名な人ばかり。自分は『こいつ誰やねん』みたいになるのでしょうけど、そんなことを気にしても仕方がない」

 秋もチャレンジする。10月中旬からテストマッチ5連戦をする正代表へ、始動から6日後の12日に合流する。予備軍のJAPAN XVの一員として、本体への昇格を目指す。JAPAN XV名義での対外試合が18、24日に控えるなか、それ以前のセッションでも存在感を示すつもりだ。

「代表は『走れるプラス、フィジカルのある選手』を求めています。さらに僕はラインアウトでのリード、スキル、がむしゃらにプレーすることが強みだとエディーさんに言ってもらえています。教わったスタンダードを下げず、チーム(ブラックラムズ)のプラスになるようにも意識します」

 代表側は、LOへ代表資格を得たばかりの海外出身者を3名加えた。身長206センチ、体重118キロのハリー・ホッキングスら新顔に対し、列島の青年は負けん気をぶつける。

「正直、『やっぱりLOは外国人を使いたいか…』という感想はあります。ただ、そこを言い訳にしても始まらない。逆に、ここで競争すれば自分はもっと成長できるんじゃないかと楽しみになっています。目の前にいるお手本をやっつけちゃえば、チャンスがある。外国人と日本人となるとフィジカルに差が出ると思われがちですが、そのフィジカルで負けたくない。なおかつ、細かい動きやスマートさで勝っていきたいです」

 12日は都内の拠点で、狭山セコムラガッツとのプレシーズンマッチにフル出場。FLとして地上の肉弾戦へ肩を、腕を差し込んでいた。

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