丸尾瞬は、掴んだ白星の意味をかみしめた。
「この1勝は、でかい」
9月15日、埼玉・熊谷ラグビー場で関東大学リーグ戦1部の初戦に臨んだ。
所属する関東学大は2006年度までに6度の大学日本一も一昨季はリーグ戦の2部に在籍。1部に戻った昨季も8チーム中最下位と再建の途上にあるが、今度の80分では前年度首位の大東大を55-35で破った。
上位3傑が大学選手権へ進めるこのコンペティションにおいて、3年生のFWリーダーは「初戦は大事だった。勝てたのはポジティブ」。ハイパントを活用した攻め方を機能させたことにも、手ごたえを掴んだ。
「今年はシステムなど、色々なことを変えた。それがはまっていて、チームとして戦えています」
自らも際立った。
先頭中央のHOで先発フル出場し、タックルされながらもぶれない体幹を活かして2トライを決めた。
さらには起点のスクラムにおいて、まっすぐな背中を保って好プッシュを重ねた。
昨年度までは、第3列のFL、NO8が主戦場だった。将来を見据えていまの位置に転じて、まだ半年ほどしか経っていない。
それでも久富雄一スポットコーチが、「色んな人と組ませて経験させた。(相手役に)『こうしろ、ああしろ』と(姿勢やタイミングなどを)変えて」と短期間での成長を促した。
何より本人が、持ち前の適応力を発揮した。おかげで、専門性の高いスクラムの動きをマスターしているようだ。
元日本代表PRの久富は、「センスの塊。伝えたことを吸収して柔軟にやっていく。教え甲斐があります」とアジャストは当然と言いたげだ。
丸尾自身も事もなげである。
「組み慣れた、というのが大きいかなと。イメージ的には1、3番(両隣のPR)ほどはきつくないです!…もっと基礎をやって、より強いチームにも勝てるように頑張らないと」
身長175センチ、体重97キロのサイズにして、かねて衝突局面で光ってきた。
コンタクトを厭わぬうえ、件のフィニッシュのような人をかわすプレーも得意なのだ。
ちなみにHOはラインアウトの投入役も任されるが、抵抗はないという。
「中学3年間、部活でバスケをやっていたので。それと似ているものがあって、不得意な感じはないです」
現埼玉パナソニックワイルドナイツ(当時三洋電機)の元主将で、関東学大のOBでもある榎本淳平監督にも太鼓判を押される。
「もともとポテンシャルが非常に高い。ラグビー選手というよりフットボーラー。BKもこなせるのでは」
地元の岡山ラグビースクール、同ジュニアラグビースクールを経て、進学した倉敷高では早朝練習つきの寮生活を経験。クラブの方針から2年生にして主将を任され、人としての底力をつけた。
最近はリーグワン上位陣からの視線を集めながら、「上(トップレベル)でやりたい。どれだけ成長できるかを大事に、進路を決めていきたいです」と、自分の未来も楽しみにする。
「いい意味で、HOらしくないスキルフルなHOになりたい」