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大切なのは「マインド」。慶大・小野澤謙真、ハイパントキャッチで存在感。

2025.09.18

青学大戦で2ゴールのWTB小野澤謙真(撮影:長尾亜紀)

 よく飛んだ。

 慶大ラグビー部の小野澤謙真が9月13日、神奈川・秋葉台公園球技場で殊勲の働き。関東大学対抗戦Aの初陣で青山学大を32-18で下し、穏やかな口調で宣言した。

「個人的にはトライとキックで、得点王というところを目指さないと、(目標の)日本一には届かない。アタックで貢献できたら」

 日本最古豪でもあるクラブが1999年度以来の頂点に立つには、まずは大学選手権4連覇中の帝京大なども加盟の対抗戦で8校中5位以内に入る必要がある。

 自ら名門を勝たせたい身長180センチ、体重90キロの2年生は、まず、昨年度の順位で自分たちが4位、向こうが5位と競っていた青学大との一戦で期待に応えた。

 WTB兼ゴールキッカーとして先発し、12-13と1点差を追う後半13分には勝ち越しに絡んだ。

 同級生FBの田村優太郎が好カウンターで抜け出したのをサポートし、勢いよくパスをもらうや巧みなフットワーク、オフロードパスで再び田村を加速させた。最後は4年生でCTBの小舘太進のトライを見届け、自らのコンバージョンゴールで19-13とした。

 スコアボードに絡まぬ領域でも、際立っていた。

 ハイパントと呼ばれる、上空へのキックを巧みに捕り続けた。

 前半21分頃には自陣ゴール前で、向こうが再獲得をにらんで蹴り込んだであろう1本の落ちるところへ駆け込んだ。ジャンプ一番で手中に収めた。

 まもなく、味方が高く放ったのも華麗にキャッチ。待ち構える青学大側と球筋との間へ身体を入れ、後ろ向きで確保した。

 後半6分には、自陣中盤の左タッチライン際へ来た楕円球を首尾よく処理した。自分のもとへ走ってきた相手の視界を遮るようなタイミングと角度で跳躍し、ミスを誘った。

「拮抗したら、ハイパントキャッチが大事になるので。チームでも大切にしています」

 こつを問われれば、橋本弾介、森航希といった自軍の先輩SHの名を挙げ「日頃から凄い(良質な)精度で蹴ってくれることが試合に現れている」。いつもの練習で難しいボールを目にすることが、本番での成功率に繋がっているという。

 援軍にも助けられる。父の宏時さんは現役時代、日本代表として3度のワールドカップに出ている。静岡聖光学院高でこの競技を始めた長男は、「親の関係で仲良くしてくれる」という名手、名門クラブが多いことに感謝する。

 春には、慶大卒のWTBで元ジャパンの山田章仁(九州電力キューデンヴォルテクス)が神奈川県内でのクラブのトレーニングへ教えに来てくれた。現代ラグビー界で重視される空中戦についても、様々なスキルを伝授してもらった。そのうえで諭された。

「一番大事なのは、マインドだと」

 青学大戦でのゴールキックを4本中計2本、外したのは改善したいと述べる。故障から復帰して間もなかったとあり、青貫浩之監督にも「まだ本調子じゃない」と発破をかけられている。裏を返せば、これから体調が整えばさらなるハイパフォーマンスが期待できるわけだ。
 
 昨年には日本代表候補合宿にも参加の逸材。ルーキーイヤーの昨季からレギュラーとなりながら、一時戦列を離れてしまったのを「(最後まで)戦い続けなきゃいけない」と反省して続ける。

「コミュニケーションの量、タイミングについては1年間で学んできたものがある(ので活かしたい)。高校の時は自分の得意なプレーだけしかしませんでしたが、(今後は)もっと周りを動かせるバックスリー(端側のWTBと最後尾のFBの総称)になれたらと思います」

 28日には東京・秩父宮ラグビー場で筑波大とぶつかる。

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