本領発揮はこれからだ。
木田晴斗は、ラグビー日本代表として初めてテストマッチに出てもなお満足していない。
遠征先のカリフォルニア州サクラメントで現地時間9月6日、パシフィック・ネーションズカップのアメリカ代表戦に後半27分から出場した。
球をもらえば持ち前のボディバランス、推進力を示し、47-21で勝つまでピッチにいた。もっとも、「自分の力は、半分くらいしか出せていない」。自慢の空中戦での強さを披露する機会がなかったし、そもそも自身が復調の過程にあると認識している。
「(体調は)まだまだ、よくなっていきます」
ナショナルチームにおける初陣は、長引く怪我からの復帰戦でもあったのだ。身長176センチ、体重90キロの26歳はこうも言う。
「目標にしていたジャージィのひとつを着てグラウンドに立った。その時は試合の自分の役割にフォーカスしていました。ただ、シンプルに試合から離れていたので、緊張した感じはありました」
小学4年で極真空手の世界王者となった。同時並行で楽しんでいたラグビーへは中学から本格的に取り組み、全国的に無名とされる大阪の関西大倉中、高を経て、関西大学Aリーグの立命大では1年目から主戦級だった。
主戦場はタッチライン際のWTBだ。2022年加入のクボタスピアーズ船橋・東京ベイでは、実質1年目のリーグワンでベストラインブレイカーを受賞。クラブ史上初の日本一にも喜んだ。
代表デビューまでは「感覚的に、道のりが長かった」。‘23年にはワールドカップフランス大会に向けた選考キャンプへ参加も、足の痛みと感染症の影響でアピールが不足した。
昨季、約9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ現ヘッドコーチにも長らく注目されたが、なかなか求めに応じられずにいた。コンディションが整わなかったためだ。
現在も、なるたけ最高のパフォーマンスを披露しながら、もっと最高のパフォーマンスを披露できるよう体調を整える日々。石田吉平、長田智希といった、同世代のメンバーらとの定位置争いの只中にいるが、本当のライバルは別なところに定める。「自分」と繰り返す。
「自分にフォーカスします。しっかりコンディションを戻していって、自分の強みであるランニングスキルを上げたいです」
過去最高の木田晴斗になったら、自ずと誰にも負けないつもりだ。もともと各所で宣言してきた目標を念頭に置き、「テストマッチや海外で活躍できる選手になっていきたい思いは、(現在も)変わらないです。必要とされるプレーを一貫して出していけるようになれば、夢に近づく」。現地時間14日、トンガ代表との大会準決勝に臨む。