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【ワールドカップ現地リポート】女子日本代表、宣言通りの先制パンチもニュージーランドに敗れる。プールステージ敗退決定。

2025.09.01

スティールやタックル、トライ、キックと攻守に輝いたSH津久井萌©JRFU

■ワールドカップ2025イングランド大会
・8月31日@サンディー・パーク(エクセター)
【女子ニュージーランド代表 62-19 女子日本代表】

 イギリスらしく不安定な天気が続いた、8月31日のエクセター。

 女子日本代表”サクラフィフティーン”は、そのエクセターにあるサンディー・パークでニュージーランドとの第2戦を戦い、19-62で敗れた。

 これで初戦のアイルランド戦に続いて2連敗となり、3試合目(スペイン戦)を残してプールステージ敗退が決まった。

 ニュージーランドは過去9大会で6度も王者の座に就き、ワールドカップ2025イングランド大会で3連覇を目指している。
 ジャパンは前回大会直前に初めて相対し、12-95と大敗を喫していた。

 それ以来の対戦となったこの日。王者を相手にしても、決して無抵抗では終わらなかった。

 地元のエクセター・チーフスで過去にプレーしていたPR加藤幸子は、「3年前はやられっぱなしだったけど、そのときよりも自信を持って臨めた」と振り返る。
 かつての同僚やホストマザー、友人らの声援を背に戦えた。

 サクラフィフティーンは試合前から仕掛けた。
 ブラックファーンズのハカを前に、長田いろは主将を頂点としたV字型で対抗。舞いの終盤には、全員がキャプテンの位置までラインを上げた。

 その意図について、長田主将は「相手もリスペクトしながら『自分たちも戦うぞ!』という強い意志を見せたかった」と明かした。

 初戦を終えた後、チーム最年長の齊藤聖奈に相談し、公家明日家らと作り上げたという。
「最後までみんなとコネクトし続けて、全員で戦うことを表現しました」

 試合の立ち上がりも、モメンタムを掴んだ。レスリー・マッケンジーHCは試合前、「殴られるよりも殴りにいく」と宣言。それを選手たちが体現した。

 開始30秒でFB西村蒼空が負傷交代に見舞われるも、サクラフィフティーンは自陣から攻めた。SH津久井萌が裏のスペースに浮かせるキックを連続で放ち、それがいずれも日本に入る。
 相手のペナルティも得て敵陣深くに入れば、強みのモールで前進、右に展開して最後は大外で待つWTB畑田桜子が右中間にもぐり込んだ(4分)。

 W杯初出場の畑田は、今大会初先発。昨夏には前十字靭帯を断裂する大けがを負うも、リハビリ期間に足腰を鍛え直した。

 向上したそのスピードを生かした先制トライについて、「WTBの責任として必ずトライを取ると心に決めていた」と振り返った。

 開始20分で3トライを奪われた、初戦の課題を修正できた。
 長田主将はその要因を気持ちの変化にあると言った。

「勝ちに行く姿勢は初戦と変わっていませんが、前の試合は保守的になってしまっていた。みんなでどういう気持ちでプレーしていたのかを話し合って試合に臨めたので、自分たちから仕掛けることができました」

 その後もテリトリー、ボールポゼッションでは優勢だった。しかし、個々のラン能力で上回るニュージーランドに一発でスコアされるシーンが続いた。
 5-5と同点に追いつかれた13分のWTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフのトライを皮切りに、前半だけで連続6トライを許す。

 風下だったこともあって、タッチラインの外に蹴り出せないミスキックなどから相手の得意とするカウンターアタックを浴びたり、オフロードパスを連続で繋がれた。

 ジャパンはボールを手にしても有効なアタックを仕掛けられず、中盤エリアで戦う手札がなかった。
 5-38のスコアで前半を終えた。

 ただ、後半の入りは再び息を吹き返した。
 両チーム最多の18回のタックルを記録したLO佐藤優奈を筆頭に、ダブルタックルを繰り返す。LO吉村乙華の好タックルもあった。

 7分には相手の反則を起点にゴール前まで迫り、モールでもPKを獲得する。
 最後はゴール前の局地戦を挑み、SH津久井萌がねじ込んだ。

 12-43とスコアの動いた27分にも、FWが気を吐く。
 体格で優る相手に対してコンタクト局面で引かず、ペナルティトライを引き出した。

 しかし、取ったらすぐに取り返され、流れをこちらに持って来るまでには至らなかった。
 結局4トライを加えられ、19-62でノーサイドの笛が鳴った。

 長田主将は「一発でトライを取られてしまうのが本当にもったいなかった」と唇を噛み、「粘り強くコネクトして全員で守りたい」と次戦への修正点を口にした。

 相手に与えた10本のトライは、そのほとんどが外側を攻略されたものだ。
 18歳の新生、FBブラクスティン・ソレンセンマギーにはハットトライを許した。

 アウトサイドCTBの古田真菜は、「スピードでは相手に分があるのでFWの選手をもう少し(外側に)引っ張ってこないといけなかった」と悔やんだ。

 前半には失トライ直前で相手をタッチラインの外に出す好タックルを見せるなど奮闘したが、「ヒットできた感覚はあまりない」と体感を語った。

「弾かれるというよりいなされている感覚で、もう一歩踏み込まないと届かない。(昨季の)全国大会の決勝でポーシャを止めたときも同じ感覚でした。NZのBKはみんながそれをできるんだなと」

 レスリーHCも「NZにはチャンピオンシップを制するだけのジェネレーターを何人も揃えている。許したトライのいくつかは、向こうの功績と捉えています。得点板だけを見て判断しないでほしい」と願った。

 ただ、「自分たちはキッキングゲームで少しナイーブだった」と話し、「キャノン砲」と評する負傷交代のFB西村とコンディション不良で欠場したWTB松村美咲の2人を欠いたことで「プレッシャーを受けてしまった」と自軍の反省も語った。

 一方で、王国相手でも通用したセットプレーは「自信に繋がりました」(長田主将)。
「最初に組んだ時点でいけると思った」というモールで、トライを取り切るまではいかずとも黒衣の塊を幾度も後退させた。

 初戦で苦しんだ、マイボールラインアウトの修正が大きかった。
 初戦での成功率は69%と低かったが、この日は82%まで向上。NZよりも6回多い17回を投じたのに、NZの73%を上回った。

「FWでは相手ではなく自分たちにフォーカスしてきました。自分たちがコントロールできることをコントロールする。すべてのディテールにこだわりました」

 セットのテンポを上げ、自分たちのペースに持ち込めた。1週間の準備で意思疎通を明確にさせ、「次はあれやるね、これやるねと、みんななでスムーズに自分たちのやりたいことを遂行できました」(LO佐藤優奈)。

 長田主将はベスト8進出を逃したことを「本当に悔しい」としながら、試合後の表情は沈んでいなかった。
 前述の通り、取り組みの成果を出せたからだ。

「自分たちの準備してきたことを出せなかったのが先週。今日は準備したことを出せた(上で敗れた)。その点ではスッキリしています」

 ヨークでおこなわれるスペインとのプール最終戦(9月7日)に向け、長田主将は「プール戦で勝ち切ることは、次のサクラフティーンに繋がる大事な一戦になる」と気持ちを切らさないことを誓った。

2試合連続でフル出場したLO佐藤優奈。チーム最多のタックル数を記録した©JRFU
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