全国各地から種別ごとに予選を勝ち抜いてきた中学生たちが集う、単独チーム中心の全国大会が9月13日からの3日間で開催される。茨城県のケーズデンキスタジアム水戸、ツインフィールドを舞台に繰り広げられる「太陽生命カップ」出場チームから、東日本大会で決勝を戦った2チームの近況をレポートする。
太陽生命カップ2025第16回全国中学生大会は、中学校単独チームの第1ブロック、中学ラグビースクール単独チームの第2ブロックなど、全国男女29チームが4ブロックに分かれて競うU15世代の全国大会だ(出場チーム一覧は文末に)。
4つのブロックのうち、U15のラグビースクールが集まる第2ブロックには、6月におこなわれた「第19回東日本U15中学生大会」の上位チームが出場する。そのうちの2チームが決勝を戦った世田谷区ラグビースクール(以下RS)と浦安D-Rocksジュニア(以下DRJ)だ。
世田谷区RSは、7年ぶりとなる全国の舞台への出場を、東日本王者としてつかみ取った。東京都大会の優勝、そして東日本への出場も、パンデミック期を挟んで7年ぶりのことだった。
東京都の決勝(5月下旬)は、前年の全国(太陽生命)優勝チームである江東ラグビークラブ(以下RC)を終了間際の逆転でしのぐ劇的な展開だった。駒を進めた東日本U15では栃木県ジュニアラグビークラブ(以下JRC)との初戦を突破、準決勝は南茨城RSを17-5でなんとか退け、決勝へ。浦安DRJとの決勝は43―7で制して「7年ぶり」の成果をまた増やした。
まさに突破を相次いで成し遂げている世田谷区RS。山田良和ヘッドコーチ(以下HC)は、太陽生命カップのトーナメント表を前に苦笑する。1回戦の相手は大阪の吹田RS、勝てば2回戦は東日本大会3位・南茨城RSと九州王者の諫早ラグビークラブの勝者と相まみえる。
「選手たちは、全国で一つでもいい経験を積みたいと東日本でもがんばりました。ただ、優勝しても、1回戦が与しやすくなる――なんていうことは、もうないんですね。出場チームどこが来ても素晴らしい相手ばかり。トーナメント表を見て実感しました」
山田HCの言葉に、チームの覚悟がうかがえる。
世田谷の今年の特長はサイズと圧力だ。
7月の計測時点で180cm、100kgをゆうに超えるFWプレーヤーが2人。FWの核になることを期待されている。
チームは緩むことのない暑さの中、なかなかパフォーマンスは上がらず苦しんでもいる。しかしスタッフを含め、尽くしてきた準備を糧に本番に臨む。この全国の舞台を見据えて、メンバー全員で戦うチーム作りを進めてきた。太陽生命ではそれはとりも直さず、先発12人でなく登録メンバー22人で3日間を戦うことを指す。選手たちが決めた今年のスローガンは「共に戦う」。7月の3連休には大会3日間をシミュレートした試合形式の練習をセットするなど、いつも課題感を実行に落として過ごしてきた。高校1年生に胸を借りるなど、タフさを磨くための積み重ねを計画的に進めている。
大会3週間前となる8月23、24日には奈良遠征に臨んだ。御所実業高校のグラウンドで他チームや高校生に胸を借り調整を進めた。遠征2日目には、本番の1回戦で対戦する吹田RSとの手合わせも組み入れた。
「実は吹田さんとは、毎年のように練習試合も重ねてきた間柄なんです。対戦が決まった時にもすぐに連絡して…じゃあ、大会前に一度やりましょうか、と」(山田HC)
世田谷区RSは準備万端だ。
その東日本王者が、6月、全国前の東日本ファイナルを戦った相手が、浦安DRJだ。
9月の太陽生命では、1回戦で名古屋RSと対戦、隣の山には、かしいヤングラガーズ(以下YR)、芦屋RSが控える。浦安DRJは、2022年に浦安ラグビースクール中学部が母体となって発足したチームだ。全国出場はその翌年から3年連続3回目。浦安の大内和樹HCは、トップのD-Rocksのチーム再編前に、前身であるShining Arcsでコーチ経験を積んでいる。
「D-Rocks(ジュニア)の強みは、スペースを支配すること。中学生年代という発育発達の面からも、出場している選手12人全員がボールに触るようなラグビーができたらと考えています」
6月の対戦は浦安7-43世田谷。意外にも思える大差には、その時点でのケガ人の影響もあった。大会前のメンバーから5人が入れ替わってのファイナルは、相手の圧力に押し込まれる展開となり、持ち味のスピードあるラグビーは封じられた。
それでも大内HCは、この時期から続くチーム全体の成長にフォーカスし、選手個々の伸び、チームとしての厚みが増していることを喜ぶ。
「東日本については、ケガをしてしまった選手のことを気にするのではなくて、出場するプレーヤーがみんなで力を出し切ろうと話していました。準決勝の相手は川口RSさん、すごく苦しみました。選手たちとは、先なんか見なくていいんだよと話していました。目の前の1試合を、このメンバーで、まず力いっぱい戦おうと。決勝ではもう力が残っていなかったけれど、本当に選手はよくやったと感じました。ケガで出られなかった子たちも最後まで応援し続けていた。当時は控えだった選手たちがその後も伸びを見せてくれた。私としては、それがすごくうれしかったです」(大内HC)
もともと現在の3年生は、一つ上の代と比べられることが多い学年だった。前回の太陽生命3位。先輩が残した壁は途方もなく高い。その代が、一つひとつ自信を積み上げてきた。
いま、浦安がフォーカスするのは、ディフェンスのスピードだ。相手アタックを勢いに乗せないよう、速く飛び出して一歩でも前でコンタクト場面を作りたい。選手の間でイメージの共有は広がりつつあり、全国大会で披露するめどはついてきた。浦安DRJは菅平合宿で、南茨城RS、相模原RS、江東RCなどと対戦した。8月24日にはワセダクラブとの練習試合を経て本番に臨む。
選手たちから、アタックへの自信は感じ取っているという大内HC。ボールを持たせてもらえれば、抜ける。そんな感覚がある。自分たちの強みを生かすために、今はどこまでディフェンスの精度を高められるか。過去2年の全国経験から、その成長は大会中も続くと指導陣は確信している。
「D-Rocksは試合ごとに伸びていく。それは夏以降も感じていることです。全国の3試合目でどんなゲームができるか、楽しみだね! 選手たちとは、そんな話をしています」(大内HC)
茨城県水戸市の2会場で9月13日から15日。大会期間はわずか3日だが、20分ハーフの中学生たちの舞台は、どの笛も成長への号砲だ。
太陽生命カップ2025 第16回全国中学生大会
ブロック分けと出場チーム
※第1ブロックの「北海道・東北代表」は8月31日に決定
■中学校男子(第1ブロック・8チーム)
茗溪学園中(茨城)、天理中(奈良)、北海道・東北代表、伏見中(京都)、富島中(宮崎)、國學院久我山中(東京)、帯山・東部中(熊本)、東海大仰星中(大阪)
■中学RS男子(第2ブロック・8チーム)
世田谷区RS(東京)、吹田RS(大阪)、南茨城RS,諫早RFC(長崎)、浦安D-Rocksジュニア(千葉)、名古屋RS(愛知)、かしいYR(福岡)、芦屋RS(兵庫)
■都道府県代表女子(第3ブロック・9チーム)
福岡県、兵庫県、千葉県・山梨県合同、大阪府、東京都、群馬県・新潟県合同、神奈川県、長崎県、京都府
■地域普及ブロック(4チーム)
松本国際中(長野)、滋賀県中学校合同、川副中(佐賀)、八戸少年RS(青森)
詳細は下記サイトに
https://www.rugby-japan.jp/news/53391
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