ラグビー王国NZで育った男子にとって、胸に銀のシダを抱く黒衣のジャージーと対峙することは特別な意味を持つ。6月28日、秩父宮ラグビー場に19,792人を集めたマオリ・オールブラックス戦でその夢をかなえたのが、JAPAN XVの12番としてフル出場したチャーリー・ローレンスだ。
香港に生まれ、5歳からラグビーを始めた。トッププレーヤーを志し、高校はNZの強豪ハミルトン・ボーイズに進む。
その後、2018年に来日し神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現コベルコ神戸スティーラーズ)に加入。トヨタヴェルブリッツを経て今季より三菱重工相模原ダイナボアーズの一員となり、シーズンを通し頑健なパフォーマンスを発揮して日本代表入りを果たした。
テストマッチではないためJAPAN XVとしての出場だったものの、その初戦の相手がマオリ・オールブラックスだったのは運命的といえるだろう。記念すべき晴れ舞台となった80分間を、「マオリと試合をするのはスペシャルなことでした」と振り返った。
「相手としてハカを見るのはすばらしい経験だったし、やっぱりかっこいいな、と。自分にとってこれ以上ないチャレンジになると感じました」
SOで先発したリヴェズ・ライハナや後半20分から入替でFBに入ったケイリブ・トラスクをはじめ、今回のマオリ・オールブラックスには学生時代にプレーしたことのある選手が複数いたことも、特別感が高まる要素となった。ちなみに試合後は、「昔から仲がよかった」というトラスクとジャージーを交換したという。
一方でゲームはマオリの自在のアタックに翻弄され、9トライを奪われ20-53で完敗するという課題の残る結果に終わった。ローレンス自身は持ち味のボールキャリーで数度いいゲインを勝ち取るなど見せ場を作ったものの、「ワイドに展開されたところでスペースを与えてしまった」と再三突破を許した防御面での課題を口にした。
「エディー(ジョーンズHC)からは、スクエアにプレーすることと、ハードにランすることの2つを伝えられていました。その点でいいボールキャリーもありましたが、ディフェンスでは足りない部分があった。もっとフィジカルに戦えなければならないし、しっかりとレビューをして、次の試合に向けて改善点を確認したいと思います」
今回の日本代表には自身を含め4人のCTBが選ばれているが、そのうちのひとりであるシオサイア・フィフィタがマオリ戦で負傷。途中からアウトサイドCTBに入った万能BKのメイン平も後半なかばで負傷交代しており、BKラインはスクランブルに近い状況だ。そうした中、JAPAN XVの大分合宿やトレーニングスコッドの菅平合宿から参加してきたローレンスの存在は、今後さらに大きくなることが予想される。
171cm、90キロとインターナショナルレベルのCTBとしてはコンパクトなサイズだが、弾丸のような縦突破と鋭い出足で突き刺さるタックルが持ち味。見事に発達した上半身と太ももの筋肉はたゆまぬトレーニングの証だ。忘れられない時間となったデビュー戦を経て、国際舞台でさらなる躍進を期す。