ラグビーリパブリック

選考への賛否にも堂々。日本代表・福田健太は「20分は出してくれ」と笑顔。

2025.06.27

前日会見での福田健太(筆者撮影)

 日が照る宮崎で充実していた。

 16日に始まったラグビー日本代表合宿がメディアに公開された20日、実戦形式のセッションで福田健太が光った。

 身長173センチ、体重83キロの28歳。攻防の起点にあたるSHに入った。

 エディー・ジョーンズヘッドコーチの謳う『超速ラグビー』のコンセプトに倣い、素早いさばき、迅速かつ細やかな連携に注力。走者が抜け出すか、接点を作るかによって首尾よく反応するのも心がけた。

 勢いをつけながらのキックも冴えた。それは2季目のジョーンズ体制が求めるプレーで、所属する東京サントリーサンゴリアスで競争する流大の得意技でもある。

 日本代表として2度のワールドカップに出た4学年上の流に、福田は助言をもらっていた。

「常に80点を出せる選手になればいい」

 おかげでほどよく脱力できたのが、妙技に繋がった。

「(以前は)ミスしたらどうしようと思うこともありましたけど、(いまは)100点を求めすぎず、いいキックを蹴られています」

 一昨季まで5シーズン、トヨタヴェルヴリッツに在籍した。強気のプレーで2023年のワールドカップフランス大会に出場したが、進歩を期して昨季移籍のサンゴリアスで出番が限られた。

 ナショナルチームを率いるジョーンズと連絡を取り合いながら、今夏の代表活動参加には過剰な期待をせずにいた。

「2027年のワールドカップ(オーストラリア大会)に出るという目標はずっと変わっていなくて。オフシーズン、(個人で)いいトレーニングを積もうと考えていました」

 チャンスに出会えたのは6月上旬。長野・菅平での代表候補合宿に呼ばれた。せっかくの機会だ。さながら「背水の陣」と捉えた。

 別な場所で述懐する。

「メンバー表に(自身の)名前があった時に皆さん(ファン)の厳しい声、批判はもちろんあったんですけど、それだけ注目されているということ。代表で戦うことは、そういうことです。次の日のことを考えず、毎セッション、エディーに言われていることだけをひたすら意識してやった結果、自分自身のパフォーマンスも上がった感触がありました」

 必死に結果を掴んだ。5月に活動のJAPAN XVでアピールした土永旭(横浜キヤノンイーグルス)、国内リーグワン1部で新人賞獲得の北村瞬太郎(静岡ブルーレヴズ)を差し置き、12日発表の正規スコッドに名を連ねた。

 見据えるのは7月5、12日の対ウェールズ代表2連戦だ。大一番へ準備に費やすのはグラウンド上の時間だけに止まらない。

「オフ・ザ・フィールドで皆とどう過ごすかも大事。(複数のクラブからの)コンバインドチームなので。映像を見ながら、9、10番(SOを含めた司令塔団)でイメージをすり合わせることも、9番(SH)がリードしたいです」

 今回初招集で司令塔候補のサム・グリーンとも、英語で話す。明大入学前に茨城の茗溪学園中・高に通ったのを踏まえて笑う。

「…気合いで! 茗溪は他の学校よりも英語に力を入れている。全部が正しい英語ではないですけど、コミュニケーションを取るのは得意なので」

 宮崎で報道陣に囲まれていると、後ろからジョーンズがやってきた。「ジュップン!」。サンゴリアスでの1試合当たりの出場時間が10分程度であることがあったため、福田はあだ名をつけられていた。

「ご飯の時も、『ジュップン、ボクノトモダチ!』って」

 6月28日、東京・秩父宮ラグビー場。JAPAN XV名義で臨むマオリ・オールブラックス戦に先発する。ニール・ハットリー コーチングコーディネーターがヘッドコーチ代行を務めるなか、ゲーム副将も務める。

 会場での前日会見で、ジョーンズとのやり取りを冗談交じりに明かす。

「『明日は10分以上、出られるな?』と。『20分は出してくれ』と言いました」

 ボスからは、ゲームを制御できる、スマートな存在であるようにも要求される。

 日本代表には21日までに、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの正SHである藤原忍が合流。ウェールズ代表とのシリーズをにらむ。同じ位置では他に、フランスのトゥールーズに在籍の齋藤直人もやがて合流の見込みだ。

 激しい競争のさなか、福田は己と向き合う。

 キャンプ地で宣言した。

「メンバーの選考は、僕がコントロールできることじゃない。常に練習で100パーセント、自分のパフォーマンスを出すだけを考えて日々を過ごしたいです」

 まずは灰色と白のJAPAN XVのジャージーを着て、「ただテンポを上げるだけではなく、落ち着かせることは落ち着かせる。ディフェンスでも(全体を)コントロールすれば自ずとボールが帰ってくるので、ターンオーバーボール(からの反撃)に繋がるようにしていきたい」。チームのしたい攻防のデザインを具現化する。

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