172㌢、90㌔と日本の女子ラグビー界屈指の潜在力を秘めるタイトヘッドPRだ。日本経済大の3年生、町田美陽(みはる)その人である。
4月に女子日本代表としてアメリカに遠征。同国に勝利したテストマッチはスタンド観戦となったが、カナダ代表とはフルコンタクトで体をぶつけた。
ユニット練習時には当たり負けしていたスクラムで好感触を得る。
「ずっと教わってきたことを意識し直すことで、対応できるようになりました」
昨季入閣のマーク・ベイクウェルFWコーチの存在が大きい。自らアドバイスを求めにいき、改善に努めてきた。
「姿勢が高いとよく言われています。自分は体が大きいので、ジャパンの目指す低さまでみんなよりも意識高くやらないといけない」
一方で、フィールドプレーは昔から備わっていた武器だ。「なぜか」親に強制された坂道ダッシュで鍛えられた。
「初速が速いとはよく言われます」
昨季の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズでは快足を飛ばし、自陣深くから走り切ったこともある。
スキルフルで、キックも得意だ。ウォーミングアップのタッチフットなどでは果敢に足技を繰り出すという。
「ショートパントを蹴ってそれを自分で獲るのって、カッコいいじゃないですか」と微笑む。生まれ変わったらCTBをやりたい。「今世は持久力がないからPRでしょうがないかな」とジョークを飛ばした。
福岡県出身。ヤングウェーブ北九州に通っていた兄の送り迎えについて行くうち、年中で自身も入団した。
恵まれた巨躯は「176㌢くらい」の姉譲りだ。サイズアップは「苦労したことがないです」。
レスリー・マッケンジーHCはそのポテンシャルを見逃さなかった。
女子15人制合同合宿に高校生で唯一招集。佐賀工1年時だった。
「合宿はメンタル的に結構しんどかったと記憶しています。人見知りということもありましたし、年上の知らない人たちの中にいきなり放り込まれて…。全然うまくとけ込めないし、気を遣ってもらうのも申し訳なかったです」
以降は世がコロナ禍に入ったが、昨年から再びお呼びがかかった。幾分、大人になったと感じる。
「あの時よりも余裕がありますし、コミュニケーションをとれるようになりました。期待されているのはうれしいので、それに応えたいです」
時を前後して日経大に進学したのは、淵上宗志監督が高校の先輩であったこと、そして何より地元から離れたくなかったからだ。日経大は福岡の二日市にある。
「福岡はご飯が美味しいので。好きなのはやっぱり豚骨ラーメンですかね。うまかっちゃんは簡単に作れるので、よく食べています」
いまはそれらのソウルフードで作られた身体から、脂肪を落とし筋肉に変えることに注力する。高校時代は「しんどくて」取り組めなかったウエートに励む。
「宗志さんにも美陽は筋肉がつけばもっと強くなれるんだけどなあ、と日々言われています。(同じ右PRの北野)和子さんがめちゃくちゃ上げているのを見ると、こんな軽い重量でやっているのが恥ずかしいです」
レスリーHCは「成長している姿は見ている」と言ってくれた。このままW杯までアピールを続ける。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン7月号(5月23日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は5月15日時点。