ラグビーリパブリック

日本代表初選出の植田和磨、新しい「サイクル」でさらに成長。

2025.06.22

宮崎合宿で取材に応える植田和磨(筆者撮影)

 加速度的に出世する。

 近大からコベルコ神戸スティーラーズへ入りたての植田和磨は、6月16日からラグビー日本代表宮崎合宿へ参加する。

 今年5月までの国内リーグワンへ、アーリーエントリー(卒業前の大学4年生が一定条件のもと公式戦に出られる制度)によって出場。持ち場のWTBで速さとばねをアピールした。

 12チーム3位と現行リーグ下初の4強以上を達成すると、今度の代表スコッドで37名中12名いる初選出勢に名を連ねた。

「トップレベルの選手たちとプレーすることには抵抗がなくて。自分が選ばれて嬉しい気持ちと、『こうならないといけない』と自分でも思ってきた」

 9季ぶりに復職して2シーズン目のエディー・ジョーンズヘッドコーチからも、高く評価される。現体制初年度の夏にも、練習生としてキャンプに加わっていた。

 正代表入りが発表されたのは6月12日。アナウンスの「2~3時間前くらい」に通達された。

「もともと候補選手とは言われていましたが、自分が入るかどうかはわからなかった。神戸にも他に素晴らしいWTBがいますし。キャップ(代表戦出場の証)をいただけるチャンスをもらえて嬉しいです」

 身長177センチ、体重87キロの22歳。4歳で地元の明石ジュニアラグビークラブへ通い始め、小学校の卒業文集へは「将来は日本代表になりたい」といった旨を記した。ただただラグビーが好きで、ずっと続けたい気持ちの表れだった。

 世界に出ることにリアリティを持ったのは10代後半からか。

 高校は全国大会の常連だった兵庫の報徳学園高に進んだ。ここでは15人制と試合時間、競技特性の異なる7人制ラグビーの楽しさも知った。近大の副将だった2024年夏には、男子7人制日本代表としてオリンピックパリ大会に出場した。

「小学校の頃から、走るのが好きで。ただ、その時は(代表入りは)現実的じゃなかった。高校で全国大会を経験させてもらってから、意識するようになりました。大学に入ったら先輩に食事、トレーニングのサポートをしてもらいながらオリンピックに行くことができた。夢が近づいているな、と感じました」

 今回、パリ組からは横浜キヤノンイーグルスでWTBの石田吉平とともにピックアップされた。矜持を問われると…。

「7人制と15人制は違う競技と言われていて、それを本当に実感しています。でも、(7人制代表として)世界トップレベルの選手のスピード、パワー、スキルを経験できたことは(15人制の代表でも)活かせると思います」

 ジョーンズは『超速ラグビー』を謳う。大外のWTBには、逆側の攻撃にも積極的に絡むよう求める。若者は適応に挑む。

 ステッパーの石田、万能型のメイン平、フィジカリティに長けるハラトア・ヴァイレアのひしめくWTBの争いにあって、自分のしたいこととチームですべきことの両立を目指す。

「エディーさんとは合流初日に1on1(個人面談)を。『突破力とハイボールキャッチは持ち味だと思う。ただ、日本代表が大事にしているゴールドエフォート(プレーを終えてすぐ次の動作に移る意識)をもっとしっかりやっていこう』と言われています。(練習では)すぐに立って、走って、オープンサイド(広い区画)に回って…のサイクルを大事にしています」

 世界各国の代表チームに携わってきた65歳のジョーンズについて、こうも証言する。

「練習中にミス、だらけることがあれば厳しいですが、ホテルのなかでは選手ひとりひとりに声をかけて下さる、距離が近い、話しやすい監督です」

 6月28日には東京・秩父宮ラグビー場で「JAPAN XV」名義でマオリ・オールブラックスに激突。7月5、12日にはそれぞれ福岡・ミクニワールドスタジアム北九州、兵庫・ノエビアスタジアム神戸で対ウェールズ代表2連戦をおこなう。

 欧州6か国対抗に参加するウェールズは‘13年にも国内に迎え、ジョーンズが最初に指揮を執っていたジャパンが同カード初勝利を決めている。ワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げる約2年前のことだ。

 当時12歳だった現役代表選手は、「めっちゃ前(の話)ですよね。その時は代表の試合をがっつり見ているわけではなかったのですが、強豪国をどんどん倒していっていることは知っていました」と振り返った。

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