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29歳で大ブレイクの吉田杏、日本代表デビューへ「びっくりするほど、緊張していない」。

2025.06.12

吉田杏[相模原DB](筆者撮影)

 口コミが広がっている。

「(自身が)いいモデル、成功例になっているようで」
 
 微笑むのは吉田杏。直近のジャパンラグビーリーグワンでブレイクした。2018年に入団したトヨタヴェルヴリッツから三菱重工相模原ダイナボアーズへ移って2シーズン目となる昨季は、レギュラーシーズン全18試合に出た。

 身長188センチ、体重108キロの29歳は、自宅にストレッチ器具を揃えて身体のケアは万全。自軍、相手ともにビッグサイズの海外選手を揃えるFW第3列に割って入り、突進を重ねた。

 新天地で開花したことが「いいモデル、成功例」になったためか、吉田と親交のある若手選手がダイナボアーズに興味を持つこともなくはないそうだ。

 あくまで自身とクラブとの相性に焦点を絞り、こう語る。

「ハードワークするチームにマッチして、成長できている」

 活躍が見込まれたのだろう。5月は日本代表の予備軍にあたるJAPAN XVに名を連ね、正代表の採用する『超速ラグビー』というコンセプトでニュージーランド学生代表、ホンコン・チャイナとの計3戦に出た。

 LOやFW第3列に入り、持ち前の推進力にフットワークを絡めた。

「リーグワンが終わってまもなく(帯同)。ほぼ休みもなく続いている感じで、凄くタフです。ただ、1日、1日、得るものがあって、自分自身に伸びしろがあると感じています」

 変わったのは、ひとつの働きを終えた直後のマインドセットだ。

 漠然と倒れたその場から起き上がるのではなく、起立と同時に次の動作に移るイメージか。

「ワークレート(仕事量)が大事と言われている。そこを高めれば、自分のキャパが上げられる。それまで無意識にやっていたことを、意識的に考えてプレーする。その重要性が、落とし込まれています」

 攻めだけではなく、守りでも接点に首尾よく絡む。関連チームも含めて指導するエディー・ジョーンズ現日本代表ヘッドコーチには、その資質を評価される。もっとも今後組まれる代表戦へ、得意なパフォーマンスの質をより高めるよう求められてもいる。気を引き締める。

「評価していただいている分、プレッシャーがある」

 ちなみにジョーンズと、以前に面識がある。

 ジョーンズは‛15年まで約4年間ジャパンを率いていた際、当時あった若年層強化機関のジュニア・ジャパンのセッションでもコーチングをした。‛14年の活動機会にも、その場にいた若者を叱咤激励していた。

 ここへ、大阪桐蔭高3年だった吉田も混ざっていたのだ。このほど久々に接したら…。

「前に指導していただいた時よりは、優しくなっているかなと」

 6月上旬は長野・菅平で、日本代表候補合宿に参加している。同月中旬から始動する正代表入りが叶えれば、対ウェールズ代表2連戦でのテストマッチデビューに近づく。

 リーグワンで対峙する外国人選手とも、気後れせずに戦ってきた。ナショナルチームにおけるポジション争いにも、自信を持って臨める。

「どんな選手を選ぶのかについては、選手はコントロールできない。求められるようにハードに、激しくコンタクトする。バトルに、勝たないと。自分でびっくりするくらい、緊張はしていないです。チャンスがあれば、頑張りないなと」

 強豪国に勝つ道筋を聞かれれば、「低さ、スピードが大事。倒れている選手を少なくしたい。数的優位を作らないと」。栄えある瞬間までの日々を楽しむ。

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