「1回目より2回目、2回目より3回目と、必ず目標のベスト8を達成したいという思いが強くなっています。チームで準備してきたことを出し切りたいです」
サクラフィフティーンの長田いろはは、出場すれば3大会目となるW杯を4か月後に控えている。
過去2大会と同じく、今大会もまったく別の立場で迎えそうだ。
初めて出場したW杯は2017年。立正大1年時だった。
わずか2キャップで迎えながら、全5試合にCTBで先発。「フィジカルとスピードの差をすごく感じました」。
特に初戦のフランス戦は忘れられない。
「フランスの先制トライは私のキックオフのキャッチミスから取られました(試合開始12秒)。それが悔しくて、キックオフキャッチの練習はその後かなりやって、いまでは得意なプレーになりました」
大会後はセブンズに専念し、かねてより目標だった東京五輪を目指した。しかし最終選考まで残るも落選。再び15人制の舞台に呼んだレスリー・マッケンジーHCは伝えた。
「あなたをFLとして使いたい」
快諾した。「最終選考で落ちて気分が下がったときに、必要とされていることが嬉しかったんです。どこでもやろうと」。
BKやセブンズで養われたスペースへの鋭いランはFWに違いを生み、鈴木実沙紀、齊藤聖奈ら先輩FLからスティールの技術を盗んだ。
たちまちレギュラーに定着。翌年のW杯にも全試合に出場した。
「最初の大会で世界との差を知り、2回目は日本の成長ともう少しでいけるという感覚を掴めました」
一人ひとりのフィジカルが向上し、ディフェンスで戦えた。一方で、浮き彫りになった課題は得点力不足。
「最後の最後、大事なところでトライを取り切れませんでした」。昨秋のWXV後は、引き続き挙がるその課題を自らの宿題とした。
「エッジでBKとマッチアップすることが多いので、一人を引きつけて外側のWTBを生かしたい。なので、OTOWAカップではボールキャリーとオフロードに注力しました」
そして、3大会目。26歳で迎えるイングランド大会は、キャプテンとして臨むだろう。前回大会後、指揮官からZoomで打診を受けた。
保育園の発表会で2人だけが叩ける大太鼓役を担い、小学校ではピアノが弾けないのに合唱コンクールの伴奏者にまで立候補する(後に母に諭され辞退)ほど好奇心旺盛だったが、代表のキャプテンは「荷が重いと感じました」。
「一度考えさせてくださいと言ったのですが、レスリーに『先に言っておきます、おめでとう』と返されて…(笑)。もうやるしかなくなって、そこで覚悟を決めました」
就任1年目は仲間に伝える言葉の選び方に悩んだが、レスリーHCから「マジックワードはない」と助言を受けた。
「ありのままの言葉で話すのが一番だなと。いま思ったことをその場で、その時のタイミングで話すようにしています」
高校3年時には福岡レディースでキャプテンを務めた。「なんでも一人でやろうとして上手くいかなかった」当時の反省も生かす。
「周りを巻き込む、みんなに助けてもらうことを意識しています」
W杯前には、2試合おこなわれるスペイン戦の一戦が、地元・北九州で開催される。
「本当に嬉しいです。お世話になった方々や先生方、友だちがいつも見に来てくれます」
特大のエールをもらい、イングランドに乗り込む。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン5月号(3月24日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は3月16日時点。