ラグビーリパブリック

スピアーズの攻撃的プレーメーカー藤原忍 キックと防御も磨いて日本一へ

2025.04.24

ブレイクダウンからボールを放つ藤原忍[S東京ベイ](撮影:イワモトアキト)

 フォーカスはぶれない。

 クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、国内リーグワン1部ですでにプレーオフ行きを決めている。

 大台に達したのは4月6日。東京・秩父宮ラグビー場での第14節で、リコーブラックラムズ東京を42-14で下して12チーム中6位以内を確定させた。

 史上初の日本一となった一昨季以来となるミッションクリアを受け、SHの藤原忍は「嬉しいです」としつつ述べる。

「常に上を見ながら、1試合、1試合、集中していきます」

 続く13日の第15節では、前年度4強入りの東京サントリーサンゴリアスに30-10で勝利(東大阪市花園ラグビー場)。その後、休息週を挟み、26日の第16節を見据える。本拠地である東京・スピアーズえどりくフィールドに、三重ホンダヒートを迎える。

 目下12チーム中2位の集団にあって、注目の26歳は言う。

「やることは変わらず、(次戦で)きちんと勝つための準備を(ヒート戦に向けて)週はじめから意識してやっています」

 一戦必勝の構えを前提としながら、短期決戦も念頭に置く。

 公開練習のあった24日は、全体トレーニングの後もグラウンドに残った。キックのセッションを繰り返した。接点の後ろで足を振り抜き、陣地を確保したり、傾きかけた流れを断ったりするためのスキルだ。

 大型FWを動かす立場で短期決戦に臨むのだ。敵陣でのプレー時間を伸ばすのに正確な足技は欠かせない。

「真上に上げてしまったり、タッチ(ラインの外)へ出さないといけないところで出せなかったりしていたので…。上(のステージ)に行くにつれて(キックは)大事になってきます」

 身長171センチ、体重76キロ。2020年度は天理大4年として大学選手権を制した。そのままスピアーズに加わり、昨季から主力格に定着した。果敢かつ鋭い仕掛けと判断で光る。

 守っても「ボス」らしく周りに指示を飛ばしながら、自らも動き回る。後衛と声をかけ合い、防御網の裏側、外側の空間を塞ぐ。

 スコット・マクラウド新アシスタントコーチの教えに倣う。

「正直に言うと、(前年度と比べて)ガラッと変わりました。(各自の)役割は、より明確です」

 接点の周りではFW陣が一枚岩となり、相手の攻撃陣形と動きに応じて組織で圧をかける。それに連なる形で、BK陣が左中間、右中間のスペースを埋める。

 就任当初のマクラウドは、区画ごとの動きを小分けに落とし込んだ。かくしてスムーズにシステムを浸透させた。藤原は続ける。

「システムがはっきりしていて、『これは、こう』と決められた動きがあるので乱れることがない。いま、FWの周りで抜かれていることはほとんどないと思うんですよ。コミュニケーションが取れていて、それがグラウンドに出ています」

 件のブラックラムズ戦では、対面でニュージーランド代表89キャップのTJ・ペレナラ ゲーム主将を警戒。この人がサイドアタックを仕掛けそうなスペースを先んじて埋めた。自陣ゴール前でトライを獲られたかに見えたシーン(ビデオ判定でトライキャンセル)を除けば、ほとんどの局面で脅威を封じた。

「しっかり、マークしていました。(防御の)枚数を揃えて、左右に振られても(動きが)見えていた。蹴られても(守備ラインの)裏をカバーできるようにして…」

 2016年就任のフラン・ルディケヘッドコーチには、事あるごとに言われる。

「9番(SH)は、ボスなのだ。もっと思い切ってやれ。例えば停滞した時、ボスなんだから(自分の周りに)FWを呼んだり、時間をかけてキックを蹴り返したり…と、自分で、考えてやりなさい」

 普段は朗らかな2児の父。フィールドではさながら統治者となる。

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