サクラが満開の東京都小金井市。東京学芸大グラウンドでもサクラの下、ラグビー部が練習を始めていた。男子部員は大学院から2年生まで16名。取材時の4月12日時点で1年生は体験参加で、確定した新入部員はいない。
それでも朝9時から先輩、後輩、男女部員がウォーミングアップ、タッチフット、ポジション別練習をおこなった。今季のスキッパー、PR/HO宮崎怜嗣主将(4年、神奈川・川和)は、メンバーたちをグラウンド脇で見ていた。「3月の合同練習(近郊の大学、高校などと)で左足アキレス腱をケガしました」。それでもポジション別のスクラムには体を貸していた。夏の菅平合宿で復帰を目指す。
今季、学芸大は戦いのステージを関東大学リーグ戦5部へ移す。’24年度シーズンまで地区対抗関東1区1部で戦った東京都市大(旧・武蔵工業大)とともに。
全国地区対抗大会優勝を目指していた。今年1月におこなわれた第75回全国大会、決勝で西南学院大を24-12で破り2年ぶり5度目の全国制覇を果たす。昨年は春の東京都国公大会優勝というチーム目標の2冠を遂げた。
リーグ戦へ移行する理由は公式戦試合数の少なさだ。1区1部は’20年度まで学芸大、都市大、東京外国語大、東京海洋大の4チームで実施されていた。翌年、外大がリーグ戦5部へ。‘23年には海洋大がリーグ戦5部へ移った。過去2年間は都市大との2チームで優勝を決めてきた。「海洋大が抜けたのが大きかったです」と宮崎主将。学芸大の実力は昨年春、関東大学対抗戦Bグループの東京大、一橋大、リーグ戦3部の東京工業大などを上回った。
大学の教員を務める鈴木秀人部長は明かす。「2校になり、対抗戦Bに参加できないか打診しましたが叶わなかった。リーグ戦は最終的に5部で参加という話になりました」。
今季のチームスローガンは「PLUS ONE」。「基礎的なスキルを一つ一つ大切にする。そして新しいステージで全勝優勝をして4部へ上がる」(宮崎主将)。リーグ戦ではモデルとなるケースがある。今季から2部で戦う新潟食料農業大だ。
コロナ感染が世界を襲った‘20年度に5部に加盟。入替戦が再スタートした翌年は5部全勝優勝し4部へ。4部も1年で卒業し3部。3部最初の年も全勝優勝したが入替戦で国士館大に阻まれた。そして昨年度、全勝優勝後、国士館大にリベンジした。
「食農大と同じ道を歩んでいきたいと思います。だからこそ今年は6名いる4年生が先頭にたちたい」(宮崎主将)。
ラグビー部が練習する周囲のトラックを東京五輪日本代表も輩出した陸上部女子選手たちが走り抜ける。部員はラグビー部よりも多い数だ。
16名の男子部員。ケガ人や教員を目指す学芸大生ゆえに教育実習で練習、試合を抜ける選手次第で15名がそろわないことになる。
新入部員の獲得しかない。体験練習で4,5名のラグビー経験者が参加しているが確定はゼロ。訪れた日は東京都高校選抜のバックス1名がタッチフットで先輩を抜き去っていた。現役では昨年度2冠達成のスキッパー、北澤陽斗(SH、茗溪学園)が修士課程へ進み残る。後輩たちと練習に取り組んでいる。
明るい話題は3月に卒業した女子選手、岡元涼葉だ。女子セブンズ代表に選出され「HSBC SVNS 2025」総合5位に貢献した。部員の中には岡元の所属チーム山九フェニックスの練習着を着ている選手もいる。
「同じチームでラグビーをしていた涼葉さんがジャパンになった。モチベーションにつながります。女子のレベルを上げていくことになる」
そう話すのは関東学院六浦でラグビーに向き合った平野ちひろマネージャー(2年)。今年はC級レフリー資格取得を目指している。タッチフットで笛を吹くが、選手として入ると素早いパス出し、切れの良いランを見せた。チームに欠かせないメンバーだ。
学芸大は4月27日にリーグ戦3部以下のセブンズ大会でリーグ戦デビュー。国公立大会は6月1日、準決勝が15人制公式戦初戦になる。