4月は門出の季節。大学を卒業した新社会人たちが初々しいスーツ姿でビジネス街を歩くさまが全国で見られる。
大阪朝鮮高校で3年時に花園大会(2020年度、第100回大会)4強入りしたメンバーたちも、今春大学を卒業した。そのうち7名がリーグワンチームへ進みラグビーを続ける。
ディビジョン1(以下1部)には帝京大から埼玉パナソニックワイルドナイツSH李錦寿(り・くんす)。三菱重工相模原ダイナボアーズPR蔡唯志(ちぇ・ゆじ/近畿大)。リコーブラックラムズ東京HO李淳弘(り・すのん/京都産業大)。浦安D-Rocksには法政大の司令塔SO金侑悟(きむ・ゆお)。
2部は明治大から2名。大阪朝高で主将NO8だった金勇哲(きむ・よんちょる)は大学ではHOにポジションを変えた。清水建設江東ブルーシャークス入り。日野レッドドルフィンズにはFB金昂平(きむ・あんぴょん)が加わる。
そして今季からリーグワンへ参入した3部、ルリーロ福岡へ朝鮮大を卒業したFL金智成(きむ・ちそん)が加入。4月1日にチームが公表した。
トップレベルの戦いに挑む大阪朝高同期に思いを聞いた。
大学選手権4連覇に貢献したSH李錦寿は、王者奪還を目指す埼玉ワイルドナイツに加わった。帝京大時代は素早い球さばきで強力フォワード、バックスをつなぐ役に徹していた。
「まずは埼玉のシステムなどを理解してどういうチームなのかを学んでいます。帝京の相馬(朋和)監督がワイルドナイツ出身なので似ているところもあるのですけど。埼玉はディフェンスのチーム、そこがしっかりしているという印象です」
加わって一番感じたのはレベルの高さだ。「一人一人のスキルであったり状況判断であったり。(チーム内競争、同じポジションの)SHもレベルが高い」。
朝高同期たちとの対戦を楽しみにしている。また、目標の一つはサクラのジャージを着ること。朝高先輩のSO李承信(り・すんしん/コベルコ神戸スティーラーズ)とハーフ団を組みたいと語る。2歳下の弟、智寿(じす/朝鮮大3年)はU23日本代表に選出されて豪州遠征メンバーになった。弟からの刺激もある。
アーリーエントリーで最初にリーグワンのピッチに立ったのが、相模原ダイナボアーズPR蔡唯志だ。第11節(3月16日)、京都でおこなわれた東京サントリーサンゴリアス戦。リザーブ17番でメンバー入りすると後半3分から左PRとして出場した。
試合は34―22で勝利。続く12節(3月22日)も17番で出場し、トヨタヴェルブリッツに31-22と連勝。そして13節(3月29日)、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに5-33で敗れた試合も後半9分に投入された。デビュー戦後に、唯志はこう話した。
「勝ててよかったのと、緊張したのですけど、いつも通りプレーできたと思います。試合前からずっと、HO安江(祥光)さんから『俺らが支えるから、緊張せず思い切りやれよ』と声をかけてもらっていました。
先に同期のアーリーエントリーの選手が試合に出ていたのは、見ながら僕も出たいなと思っていました。でも焦っても仕方がないので。チャンスが来たらつかもうという思いで練習に取り組んでいます。
最初は緊張して、ラインアウトのディフェンスで、本当はリフトを上げなきゃいけなかったのですけど、それを忘れちゃって。ウォルト(・スティーンカンプ。LO)に胸をバーンとしばかれて、それでほぐれて、スイッチが入りました」
チームには、同じポジションに朝高の先輩PR安昌豪(あん・ちゃんほ)が構える。
ブラックラムズ東京HO李純弘には2月末に話を聞いた。
1月2日、大学選手権準決勝の早稲田大戦。京産業大は19-31と敗戦。決勝への道を阻まれた。この試合で李は左膝の靭帯を断裂した。2月末はリハビリ、ウエートを中心に練習していた。ベスト4の壁を感じる大学ラグビーだった。
「高い壁をこえるためには変化が必要と感じました。スピードの部分で帝京や早稲田が上回っていました。そこで負けていたら勝てない」
ブラックラムズ入りについて「声かけていただいたのがラムズでした。すごくいいチームで。東京に本拠地をおいていてグラウンド、クラブハウス、寮が同じところにある。自分が必要としていた環境がありました。試合へ復帰できるのは4月を予定しています。チームからは運動量とセットプレーを期待されています」
朝高同期との戦いについては、「すごく嬉しい。敵同士で戦えるのを楽しみにしています。ダイナボアーズ唯志と話をしました。これから会う機会もある」。彼らの姿は後輩たちに刺激になる。「試合に出て在日の出身者が活躍することでラグビーを頑張る原動力や上を目指していく人たちへ力を与えられれば」。
2部から1部を目指す清水建設江東ブルーシャークスHO金勇哲。率直な思いを語る。
「今は、ケガを直してから試合の出場を目指したい。2部なので、チームの1部昇格に努力をしていく」。そして「1部にいる大阪朝高の同級生と同じステージで争いたい」。
3部のルリーロ福岡。クラブチームとして誕生し、メンバーは様々な企業で働きながらラグビーを続けている。FL/NO8金智成も同じだ。在日関係者の紹介で朝銀西信用組合福岡支店へ入社した。
「練習はリーグ中なので週5回か6回あります。夜19時から21時が練習時間」
チームは70名規模の大所帯だ。その中で試合メンバーを取りにいかないといけない。チームからは高いワークレート、接点の激しさの強化を求められる。「通用している実感はあります。まずは謙虚に学び続ける姿勢が大事。その先にキャリアのステップアップはあると思います」
朝鮮大には4強の同期8名が入学した。部員数の減少に悩む中で1部昇格を目指して戦い続けた。4年時は共同主将でチームを引っ張った。
「3年生になってからオフの日の行動とか言動とか意識の差が出てきました。ミーティングの準備、規律を守る。プレーでも派手ではないですがチームの先頭に立とうと、ストイックでした」。1部昇格はならなかったが、今は満足だ。「人生の中で一番、学びがあった4年間でした」。
朝大には部員不足がつきまとう。1年生も即戦力として試合に出場する。それだけに智成は思いがある。「1年生が入学して体系的に育てる仕組みを整えていければ」
今はチームの拠点である久留米市と福岡市の中間に住む。初めての一人暮らし。自炊をしている。実家からは心配して食材が送られてくる。
福岡には小学4年生から中学1年生まで住んでいた。高3の花園大会では「福岡の同胞があたたかい応援をしてくれました」。
大阪朝高元監督の金信男(きむ・しんなむ)さんは彼らを「ラグビーが好きだから大学でも続けてリーグワンへ進んだ。その一点」と見る。
日本代表SO李承信はいう。「後輩たちと戦えるのを待っている」。