筑波にも女子ラグビーを――。その思いが3月2日、ひとつ形になった。
関東大学対抗戦Aに所属する筑波大学に、女子ラグビー部はない。
筑波大学大学院に通う星静(ほし・しずか/4月で修士2年)はもどかしかった。
その環境を理由に、競技を辞めた2人の後輩を見たからだ。
星とともにRKUグレースに所属していたが、同じ茨城県で活動しているとはいえ車で片道1時間弱の移動を伴う。
鹿尾みなみ(RKUグレース→東京山九フェニックス)ら前例こそあるものの、学業との両立は難しかった。
「せっかくここまでラグビーを続けてきたのに、(そうした理由で)辞めてしまうのはすごくもったいない。このつくばの地域で練習できる環境を作れないか、と考え始めたのが始まりでした」
最初の活動は練習会の開催だった。
茗溪学園の初代監督で現在は事務局長を務めながら地元の女子チーム「茨城ワイルドローズ」の指導にあたる柴田淳さんと3年前に繋がり、茗溪学園の女子生徒をはじめとする地元の中高生と一緒に月に1回の練習会を開いた。
その後、西舞衣子(横河武蔵野アルテミスターズ所属)や城遥花(RKUグレース所属/弟は早大1年の央祐)らラグビー経験者が入学。
「もしかしたらこれだけ集まれば試合ができるのではないか、と。まだ何も実現していないのに、妄想はどんどん膨らんでいきました」
昨年の10月頃から練習試合の実現に向けて本格的に動き始め、「筑波大学女子ラグビーチーム」を立ち上げた。
オフシーズンに入った今年2月からはRKUグレースやアルテミスターズに通うメンバーたちも参加したトレーニングができた。
ジャージーのデザインを考えたり、ジャージー制作のために地元企業、飲食店に出向いてスポンサーを集めるなど、すべて自前で奔走。
ラグビー部OBで今回は監督を担った松宮龍太郎さんの協力もあった。
「普段からお世話になっているお店などに伺い、みなさまのご協力のおかげでジャージーの制作から(試合の笛を吹いた)レフリーにお礼ができるほど、十分に集めることができました」
対戦相手は早稲田大学ラグビー蹴球部女子部に決めた。
学生たちが声を上げ、昨年4月に部を発足させたいわば「先輩」だ。
「横尾(千里/HC)さんに直接アタックしまして…。思いを伝えたところ、承諾いただきました」
つくば地域のラグビー振興などを目的に活動する一般社団法人「つくばスクラム」の協力もあり、同団体らが主催する「つくばタグラグビーフェスティバル」のエキシビジョンマッチ(セブンズ)としての開催が決まった。
3月2日におこなわれた同イベントには、子どもから大人まで幅広い世代が参加。ボールプレゼンターとしてつくば市長の五十嵐立青氏も駆けつけ、約300人が見守る中、試合を開催できた。
「こんなビッグイベントになるなんて思ってもみませんでした。地域の方、ラグビー部、つくばスクラム…本当にいろんな方々のおかげでここまで来られて、勝利することもでき(34-12)、大大大成功です!」
日本国内において女子ラグビーの環境整備は急務だ。事実、女子ラグビーチームを持つ関東圏の大学は日体大、流経大、立正大、早大の4つしかない。卒業後の進路に悩む高校生ラガールも多いだろう。
「今回のようなイベントをまずは毎年、開催したいと思っています。筑波大学に憧れて、筑波でラグビーと勉強を両立したいと思ってくれる子が増えたらいいなと」
国立大学初の女子ラグビー部の発足に向け、大きな一歩を踏み出した。
【筑波大学女子ラグビーチーム・メンバー】
・星静(大学院1年/名古屋レディース所属/RKUグレースOG)
・小西似呼(大学院1年/横河武蔵野アルテミスターズ所属)
・安藤奏子(看護学類4年/RKUグレースOG)
・田上碧彩(体育専門学群4年/RKUグレースOG)
・土井美咲(順天堂大4年/4月から筑波大大学院進学/RKUグレース所属)
・竹内双葉(看護学類3年/ブレイブルーヴOG)
・西舞衣子(体育専門学群3年/横河武蔵野アルテミスターズ所属)
・城遥花(体育専門学群3年/RKUグレース所属)
・山崎菜月(体育専門学群1年/愛知ラガールOG)
・上野花珠(体育専門学群1年/横河武蔵野アルテミスターズ所属)