謙遜か本心か。
「ちょっと、ラッキーかなとも」
14歳から日本で過ごす22歳のワーナー・ディアンズがそう振り返ったのは、空中戦のラインアウトについてだ。
3月22日、東京・秩父宮ラグビー場。東芝ブレイブルーパス東京の先発LOとして、国内リーグワン第12節に臨んでいた。前年度のファイナルを争った、埼玉パナソニックワイルドナイツとの一戦だ。
今季の首位攻防戦でもあるこの80分を通し、ブレイブルーパスは相手ボールラインアウトでターンオーバーを重ねた。
トッド・ブラックアダーヘッドコーチは頷く。
「ジョシュア・シムズFWコーチたちが(戦前に)プランを立てた。その実行を、選手たちは楽しんでくれていた。ディアンズたちが、空中で競ることを楽しんでくれた。ワイルドナイツはセットプレーがいいとわかったうえ、そこへ真っ向勝負しようと準備しました。これが、試合を決定づける違いになった」
もっともディアンズは、その所感を聞かれるや幸運があったと述べる。
どの試合でも、ライバルが想定通りに動いてくるとは限らないからだ。
「相手のボールが自分たちの競っていたところ(に来た)。分析もしていましたけど、きょうは、ラッキーだった」
42-31で勝った。
1位浮上に至るまで、ディアンズはラインアウトのほかフィールド上の防御でも光った。迫る走者を掴み上げたり、その場でせき止めたり。
日本代表21キャップを誇るこの人、身長202センチ、体重124キロのサイズで機動力がある。
「相手はラック周りでモメンタム(勢い)を作るアタックだった。できるだけスローボールにして(接点で球出しを遅らせ)、自分たちの(他の選手による)ディフェンスがセットできる時間を作って…という感じで」
対するワイルドナイツは、リーグワン発足から4季連続でファイナリストとなった常勝集団。もっとも今回、19シーズン年ぶりの連敗を喫した。
背景には、リーグ連覇が期待されるブレイブルーパスの激しさがあった。身体のぶつけ合いで際立った背景について、リザーブだったLOの伊藤鐘平は語る。
「(普段から)バチバチ『当てる』練習をしています。それほど長い時間ではないですが、強度の高い練習を週に2回。またK9という試合に出られないメンバーがいいプレッシャーをかけてくれる。その相乗効果で、フィジカルがよくなっているのかなと感じます」
日頃の積み重ねの成果を発揮するこのコリジョンバトルにおいて、特に光ったひとりがディアンズだったのだ。
「前半の途中から、よくなった。自分たちがアタックでモメンタムを作れた時から、ディフェンスでも自信がついた」
第5節の後半26分に足を痛めて退き、第9節まで欠場した。故障から復帰するまでの間は、「できるだけ早く試合ができるよう、自分のケア、メンテナンスを」。いまは復調傾向にある。
「悪くはないです、コンディション」
部内で受ける圧力に背中を押されながら、最後まで献身する。