暮らしに一貫性がある。
ラグビー日本代表の原田衛が3月18日のチーム練習後に実施したのは、ハンドダミーとタックルダミーを使った個人セッションだ。
所属する東芝ブレイブルーパス東京が使う都内のグラウンドの隅で、代表でも一緒だった主将のリーチ マイケルと交代しながらタックル、起立、クリーンアウト、ラインニングを繰り返す。
加盟するリーグワン1部の試合をほぼ毎週末に控えながら、このハードワークを「火曜」におこなう。
「(始めたのは)去年のシーズンからやっています。火曜日は大体。(週の)前半にやって、あとはリカバリーに」
身長175センチ、体重101キロの25歳。桐蔭学園高、慶大で主将を務め、いまはブレイブルーパスでプロ選手として動く。すべての行動を、限られた競技生活をよりよくすることへ繋げる。
睡眠の質を保つため、20時以降はただでさえあまり触らないスマートフォンに一切手をつけない。寝るのは早い。
トレーニングがなくてもクラブハウスのジムなどで身体を動かし、英会話の勉強も怠らない。
いつもの「個人練」をメディアに披露したこの午後は、ヘッドキャップをしたまま囲み取材に応じた。答えのひとつひとつが振るっていた。
部内で任される副将としての心がけを問われ、真顔で周りを笑わせた。
「最近はマイケルさんに頼りっぱなしで、何もすることがない。だから、できるだけ(リーチの発言への)返事は大きく! あと、試合中は(リーチら海外出身のチームリーダーが)英語で話すので、それを(FBの松永)拓朗さんとかに日本語で伝える!」
昨秋に初めて代表の海外遠征を経験。帰国後は合流したチームへの適応などに苦労したが、年明けから徐々に調子を上げていまに至る。
15日には愛知・豊田スタジアムで、トヨタヴェルブリッツとの第11節に先発。後半26分に退くまで、ひたすら走者へ強烈に刺さった。33-22で今季9勝目を挙げた。
「タックルでどれだけ身体を張れるかが重要。できるだけタックル回数を増やしてチームに貢献したいと思っています」
競争力が増すいまのリーグワンへ臨むさなか、ジャパンのエディー・ジョーンズヘッドコーチから簡潔なメッセージをもらっている。
「除脂肪体重1キロアップ」
「歩くな、速くセットしろ」
「自分のスキル——スローイング、タックル、パス、キャッチ——を極めていけ」
今回とは別の日に明かしたこの題目を念頭に置きつつ、チームマンとして生きる。
「(リーグワンは)本当に白熱した戦いが多い。実力が拮抗している。そこで、東芝らしく1試合、1試合を突き詰めていって、最後は優勝できるシーズンにしたいです」
第12節を22日に控える。当日は東京・秩父宮ラグビー場へ、前年度の決勝で下した埼玉パナソニックワイルドナイツと、首位攻防戦を繰り広げる。
勝ち点3差で追ういま、原田は展望する。
「僕らが1位になれる可能性もある。狙っていきたい」
ワイルドナイツとは2月9日、埼玉・熊谷ラグビー場での第7節で激突。28-28と引き分けている。ハーフタイムの時点で9点ビハインドも、一時は勝ち越した。
「パナ戦で自分たちのアタックが通用することに自信を持って、レベルも上がっている。(次戦では)僕たちのアタックをリーグワンで優勝するためのスタンダードにする試合にしたいです」
持ち場のHOで出場すれば、対面には日本代表でも一緒になった坂手淳史を迎えうる。ワイルドナイツの主将でもある坂手の名を挙げ、こう述べる。
「坂手さんにスクラムを押されたので、やり返したい。セットプレーを安定させて、次は勝ちたいです」
ビッグマッチの集客は好調。メインスタンド中央のエリアのチケットは完売のようで、荒岡義和社長は「我々としてのホスト(主催)としての(今年度)最多観客動員を狙っている」。大舞台におけるコンセプトを聞かれ、原田は「Go through」と即答した。ワイルドナイツの強みの組織防御を破りたい。