ラグビーリパブリック

大切に、丁寧に。ブルーレヴズ郭玟慶のスクラム探究。

2025.03.01

PR郭玟慶[静岡BR](撮影:松本かおり)

 日本は「第二の故郷」。ラグビー台湾代表3キャップの郭玟慶は、この国の摂南大を経て静岡ブルーレヴズに入り現在4季目となる。

 学生時代の授業や、わからない単語があるたびに調べる習慣を経て日本語の読み書き、会話は上達。「台湾は漢字の国。漢字は強み」とのことだ。

 22年春、責任企業のヤマハ発動機の社員選手としての暮らしぶりについて聞かれたことがあった。

 その折は、「製品化学物質管理という仕事。普段の日常生活の日本語と、会社での日本語は全く違いますから、難しいところも結構ありました」。業務上発生する「カタカナの専門用語」に苦労しているようだった。

 その歩みを総括すると、周りへの感謝が口をつく。

「僕は日本に来て色んな人にサポートしてもらいました、ラグビーでその感謝の気持ちを持って、皆に返したい」

 身長180センチ、体重121キロ。競技でのポジションは右PRだ。クラブの看板たるスクラムで最前列に入り、密度の濃いパックを作る。

 背筋を伸ばし、腰を落とし、股関節に力を籠め、なるたけ相手の奥側へ入り込んで後ろの押しを伝える。

「レヴズの選手は他のチームと比べたら身体が小さいのですが、(FW)8人の力をひとつの力にして相手のスクラムを崩す」
 
 昨季は出番なしに終わるも、今季はここまで9戦中5試合に出場。目下12チーム中4位と好調なチームで存在感を示す。

 驚かされたのは2月22日。敵地の東京・スピアーズえどりくフィールドでの第9節へスタメンで出た日のことだ。対するクボタスピアーズ船橋・東京ベイに、スクラムで勉強させられた。

「押せる時はあったんですけど…。特にマルコム・マークスに対して、やりたいことができなくて」

 この午後のスピアーズでは、最前列中央のHOで南アフリカ代表79キャップのマークスが先発していた。

 身長189センチ、体重117キロの怪力の持ち主のことを、郭は「強くて、堅いですよね。身体が伸びたら本当に強い選手」と見ていた。「伸びたら」とは、上半身の全長を活かして圧をかける様子を指す。

 そのため郭らブルーレヴズ側は、予備動作の段階から相手との間合いを詰め、押し合う瞬間にマークスの体勢を「窮屈にさせたい」と考えた。

 ところが実際には、マークスの望んだ通りの距離感で組むことが多かった。お互いの立ち位置を定めるレフリーとのやり取りにおいても、マークスは長けていた。その延長で、スピアーズにいくつかの会心のスクラムを許した。郭の述懐。

「ヒットで相手のフロントローを潰す(姿勢を窮屈にする)。それが、できなくて…」

 14-62で今季3敗目を喫した。もっとも、シーズンは続く。レギュラーシーズンでの再戦がないスピアーズへリベンジする可能性は、上位6傑によるプレーオフへ進むことで浮上する。

 まずは3月2日、本拠地のヤマハスタジアムでの第10節で三重ホンダヒートとの対戦がある。

 スピアーズ戦直後に郭は言った。

「いい研究、レビューして来週にはいいスクラムを組んでいきたいです。試合中の1本、1本を大切に、丁寧に。1本、1本にフォーカスします」

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