おそらく期間限定となるであろうエース級が、見事に機能している。
ショーン・スティーブンソン。ニュージーランド代表1キャップ(代表戦出場数)を誇る身長190センチ、体重100キロの大型FBだ。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイへの緊急参戦を発表したのは1月14日。4日後の18日に早くもリーグワンデビューを果たし、翌週の第6節からは2試合連続で先発出場中だ。
2月15日には本拠地である東京・スピアーズえどりくフィールドで、コベルコ神戸スティーラーズとの第8節に臨む。ここでも15番を託される。
「ニュージーランドと比べて気温は寒いけれど、楽しんでいます。日本人も優しい」
季節が真逆の南半球から来た人がこう笑ったのは8日のこと。神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、上位を争う横浜キヤノンイーグルスに30-22で競り勝っていた。
「日本のスキルセットがあり速い展開のラグビーは、自分の強みにぴったりです」
この午後は得点シーンで映えた。
後半3、20分に敵陣ゴール前で好パスを繰り出し、ハラトア・ヴァイレアの2トライをアシストした。いずれの場面でも迫るタックラーのもとへ駆け込み、相手を引き寄せ、投げる方向へスペースを作っていた。
16-22と6点差を追う25分には、敵陣中盤右のエリアで光った。イーグルスの擁する南アフリカ代表58キャップのSH、ファフ・デクラークが間合いを詰めてくる中、左の仲間から飛んできたパスをワンモーションで外側にさばく。
受け手のSOの押川敦治は勢いよく走り、守備の裏側へのキック。ヴァイレアのハットトリックを演出した。
直後のゴール成功で23-22と勝ち越したこの流れを、殊勲の新参者はこう振り返った。
「しっかり前のスペースを見ていたところで押川からいいコールをもらい、クイックハンズを。その後はいいキックがあり、ヴァイレアがフィニッシュ。嬉しいです」
突然の来日には理由がある。
開幕前、もともとスピアーズの正FB候補だったウェールズ代表92キャップのリアム・ウィリアムズが家族のサポートのため退団していた。
ここで白羽の矢が立ったのが、スティーブンソンだったのだ。もともと来季以降の獲得リストに並んでいたようだ。
本人も、新しいチャレンジに前向きだった。12月に一時的にスピアーズへ帯同して帰国。就労ビザを取り、アナウンスされた時期に再合流した。
その後は機を見てのカウンターアタック、豪快なオフロードパスでもチームを助けている。
今シーズンは、第10節までの滞在となりそうだ。
スピアーズといまの契約先であるニュージーランド協会との交渉結果による。以後はニュージーランドにおける所属先のチーフスの一員として、国際リーグのスーパーラグビーへ参戦する予定だ。
今後について聞かれた当事者は、本音ではリーグワンを最後まで戦いたいと言いたげ。最終的にはこう答えた。
「これからどうなるかわからないけど、楽しんで、ハードに練習して、スピアーズの勝利に貢献したいです」
いずれにせよ、来季以降の加入は確実視される。
ちなみにプライベートでは「まだ買い物ができていませんが、古着が有名らしいので見に行ってみたい。もともとファッションに興味があるんです」。同僚から原宿、下北沢、高円寺といった地名を教わっているのだろうか。大柄とあり、「サイズが合うかはわかりませんが」とも笑った。