いま来日中の世界的ラグビーマンにおいて、もっとも所属先への貢献度が高い選手のひとりだろう。
南アフリカ代表79キャップ(代表戦出場数)のジェシー・クリエルは、2019年に横浜キヤノンイーグルス(現名称)入り。前年度まで国内リーグワン2季連続4強入りの集団において、一貫性のあるパフォーマンスを披露する。
昨季こそシーズン中盤に怪我で抜けたものの、重要局面ではカムバックしていた。
身長185センチ、体重95キロのアウトサイドCTB。まもなく31歳だ。
ボールを持てば持ち前の強さときれを活かしてラインブレイクを重ね、何より、ボールを持っていない時も相手の脅威となる。
タックル、カバーリング、キックチェイス…。特に、味方SOの田村優らの蹴ったボールを追いかける勢いとスピードで、相手の捕球役へ圧力をかける。
チームマンで鳴らす本人は、「自分の仕事をしているだけです」。対外的には概ね英語を用いるものの、時折、日本語も交える。
ここでは沢木敬介監督について「KANTOKU」と発音し、きつい状況でももう1歩を踏み出す重要性を語った。
「監督からも、言われています。『タフチョイスをしろ』と。それが自分たちにいいエナジー、雰囲気を与えることもわかっています」
昨秋はナショナルチームのキャンペーンでも活躍した。休息もほどほどにしてイーグルスへ合流し、昨年12月の開幕へ調整した。
「基本的にオフは取りませんが、(代表活動後は)1週間だけ南アフリカで休みました。(キャンペーン最後の)ウエールズ代表戦後は直ぐにリーグワンに頭を切り替えました。常に何か次の仕事があること、イーグルスでプレーすることに喜びを感じています。ファン。サポートしてくれる方が誇れるようなパフォーマンスをしていきたいです」
その後は開幕2連敗も目下4連勝中。巻き返しのプロセスを聞かれ、こう応じる。
「各リーダーが自分たちに矢印を向けた。自分たちがイーグルスのラグビーをするためにどんなコミットメントをしなければいけないかにフォーカスを当て、スタンダードを取り戻そうとしました。その後、リーダーだけではなく各選手も求められるバー(基準)の高さを理解していったのです」
話をしたのは1月11日。会場の神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場のミックスゾーンでのことだ。
ちょうど静岡ブルーレヴズとの第4節を53-35で制し、殊勲者のひとりとして思いを語っていた。
約5分の取材機会のさなか、別な選手のインタビューとの兼ね合いから通訳担当者が交替する一幕があった。
人柄がにじんだのはここからだ。
両者がバトンタッチする際、クリエルはひとりめのスタッフに「ありがとう」と謝辞を述べて質疑を続けた。